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ⓒ YONHAP News

事件は先月28日に起きました。ソウル・蚕室のロッテワールドモールの地下1階に飾られていた、アメリカの画家ジョンワンさんの絵画に誰かが無断で絵具を塗った痕跡が見つかりました。ロッテ側の通報ですぐに警察が出動、監視カメラを確認し、男女の若いカップルの仕業であることが分かりました。このカップル、すぐにつかまりました。

捕まった20代のカップルは「壁に落書きがされており、下にはペンキと筆もおいてあったので、描いてもよいと思った」と話していました。

ジョンワンは、華やかな色彩と自由な構図を通じて自由と若さを表現し、街の落書きを芸術に発展させたと言われる世界的な美術家です。2015年にはフランスの最高勲章である「レジオン・ドヌール勲章」を受賞したことでも知られています。

被害にあった作品は、彼が2016年に訪韓した際に描いた作品で、大きさが横7m、縦2.4mという大きなものです。そして推定金額5億ウォンの作品です。

展示の主催者側、警察ともに、今回の件は故意ではないと判断し、善処することにしました。展示場の関係者は「作家側に訴訟や保険処理をしない方向で話をしている」とした上で「作家が受け入れてくれなければ賠償はすべきだろう」とコメントしていました。

事件の翌日、この件が報道されるとネットにはこのカップルをかばう書き込みが相次ぎました。

「フェンスも設置しない状態で前に絵具が置いてあれば、描いていいと勘違いして当然だ」

「筆と絵具を置いた方が悪い」

「5億ウォンもする絵をきちんと管理していない業者のミスだ」

「実物の写真を見たら、落書きされた部分が解放感を表す女性の姿にも見えて、むしろ価値が高まったように思える」

「落書きによって、逆に価格が倍に跳ね上がる可能性も」

「どこが落書きかよく分からない。元の絵とよく合っている」

このように国内からは、作品自体が壁に書かれた落書きのような作品だし、その大きな作品の下にペンキと筆までおいてあり、監視の人間もいなかったのだからと、カップルに同情する声が相次ぎました。

しかし事件から10日後作家側から連絡が来ました。

「 若いカップルが故意にした行動とは思われない。法的な責任を問うことはせずに円満に解決されると信じている。ただし毀損された絵は復元してほしい」

これに対し韓国の主催者側は

「作家はクールに反応すると思っていたが、こんな状況になり残念だ。できるだけ問題のカップルが被害を受けないように協議を進めている」

と話しています。作品は展示期間の6月13日まではこのまま展示し、その後復元に着手するということです。そして復元費用はおよそ1千万ウォン、所要期間は1カ月程度だということです。

この一連の件についてまだ論争が続いています。

「最初から画家本人が絵の構図や色合いにいちいち意図を持って描いたわけではなく、復元とはどういうことか」という意見があると思えば、「見た目で弁別できないからといって、毀損に正当性が与えられるわけではない」という反論もあります。

このような展示されている作品に対する破損事件、実はこれまでにも何度か起きています。2年前には80代の男性が国立中央博物館で展示されていた古代ローマの展示遺物に触って破損させたことがありました。また2015年には自然史博物館を訪れた家族が象牙の化石を破損したこともありました。どちらも事件は穏便に済まされました。

一連の経過を見ているとメディアもネットも、このカップルが1千万ウォンの弁償金を払うかどうかという点に論争の焦点があるようです。私は問題はそんなことではないと思います。日本に比べて韓国では作品と観客の間の距離が近かったり、ガラスの仕切りがなかったり、監視の人がいないことがよくあります。カメラ撮影も比較的自由です。そして落書きに対する感覚も、特に若い人の間ではあまり罪悪感が無いように見えます。変化を愛するからでしょうか、私には作品をそのまま大切に保護しようと姿勢、作品やアーティストに対する尊敬の念が足りないように思えてしまいます。

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