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ライフスタイル

30代の野党党首の誕生

#マル秘社会面 l 2021-06-16

玄海灘に立つ虹

ⓒ YONHAP News

最近の韓国で一番の話題は何と言っても 保守系最大野党「国民の力」の代表に国会議員の経験がない36歳の李俊錫(イ・ジュンソク)氏が選ばれたことではないでしょうか。まず小須田さんはこのニュースを見てどのような感想を抱かれましたか。


テレビで予備選挙の討論会の様子を放送しているのをみて、初めて存在を知りましたが、対立候補を舌鋒するどく論破しているといった感じで新鮮でした。代表に選ばれるための選挙では、世論調査の結果が3割、党員投票の結果が7割の割合で計算され、党員投票ではかつて院内代表だった女性の羅卿瑗(ナ・ギョンウォン)氏の得票のほうがわずかに多かったものの、世論調査では60%近い支持を得て、当選が決まったということで、この結果は要するに国民が政治に何を求めているかという意向の結果でもあり、国民の間には、何か、新しい風を求める雰囲気があったのかと想像しています。

一番注目されるのは36歳という年齢ですよね。それも保守政党の国民の力の代表ですから驚きです。革新系では2010年に民主労働党の代表に満41歳のイ・ジョンヒ議員がなったことはありますが、その時にも若い党代表として話題になりました。日本でも、党代表ではありませんが最近では北海道の鈴木知事が38歳、大阪府の橋本知事も38歳など30代の知事というのはいますよね。

あと日本の政界では将来、首相になるためには若いときに大臣や党の幹事長とかの重責を担い、いわゆる王道教育を受けさせるという雰囲気があります。小渕優子という少子化担当大臣になったのは34歳で女性最年少、小泉進次郎が環境大臣になったのは38歳で男性最年少といわれた。いずれも父を首相にもつエリートです。韓国では憲法の規定で、大統領の被選挙権は40歳以上、大統領選の前、1年間は党の代表を務めることはできないという規定があるので、李俊錫(イ・ジュンソク)氏は来年の選挙には出られませんが、当然、次の次の選挙では、有力な大統領候補となり、これからはそういう目で見られることにもなります。

今回の結果と関連しよく話題になっている人物が二人います。一人は金大中元大統領で、1970年に野党民主党から45歳で大統領候補に選ばれました。当時は党内から「そんな若造が乳臭い」という反発もあったようです。今回のイ・ジョンソク代表の選出に関しても東亜日報の記事にはこんなタイトルがありました。「 新野党代表、文大統領とは親ほどの年齢差 与党代表とは22歳差」日本も韓国と同じように年齢からくる影響というのはありますかね。

年齢というよりは当選回数の差で実力は評価される傾向にあるとようです。田中角栄という政治家がいましたが、彼が国会に初当選したのは29歳のとき、大臣になったのは39歳、党幹事長は47歳、首相就任は53歳、当時最年少といわれました。安倍総理が首相に就任したのは52歳で、それよりもさらに若く、戦後最年少と言われました。年齢とか若さの問題ではなく、指導者というのは、自分の周囲にどれだけ同じ考えをもった同志、派閥の人間を集めるかにかかっているのでは。

年齢という点でいうと、日本の韓国ウォッチャーの間でいま話題になっているのは、イ・ジョンソク代表は、北の金正恩国務委員長よりも若いという点です。金委員長の生年月日については諸説ありますが、一番若い説でも37歳6か月です。かりに南北に同世代の若い指導者が並び立ち、直接向き合ったとき、どういう風景が展開されるのか、想像してしまいます。

もう一人、アメリカのトランプ前大統領ともよく比較されています。これはライバルだったナ・ギョンウォン候補が選挙の過程でイ・ジュンソク人気を「トランピズム」と言って批判したことに発します。トランプとポピュリズムを合わせた言葉ですが、政治経験の無い二人がそれぞれ大統領や党代表になったわけです。政治経験のない人が大衆の人気だけで重要なポストに付く。日本ではどうですか? 昔からタレントや運動選手出身の国会議員とか日本にはいますよね。成果も残しているし。

「風が吹く」という言葉がありますが、選挙の結果はいつも水物で、メディアの報道の仕方によって世論ががらりと変わったり、特定の政治家の人気に引っ張られて、投票行動が変わったりということは過去になかった訳ではありません。その結果、政治には素人の新人やタレント議員などが多くの議席を占めたということもありましたが、そうやって当選した議員が次の選挙にも勝つということは簡単なことではないようです。日本では、衆議院解散、総選挙ということはいつでも起こりうることで、政治家は次の選挙に対していつも戦々恐々としています。一時のムードで当選しても実績を残さないかぎり政治家として生き残るのはたいへんなようです。


イ・ジュンソク代表、代表になってからの動きも非常に画期的です。普通は一番最初に歴代の大統領などが眠っているソウルの国立ソウル顯忠院を参拝するのですが、彼は大田の国立大田顯忠院を参拝しました。ここに北韓からの魚雷攻撃で沈没したとされる韓国哨戒艦「天安(チョナン)艦」沈没事件の犠牲者たちが眠っているからです。またヨイドの国会議事堂に登院する際に自転車でやって来たのも大きな話題になりました。こういう画期的と思われる行動、どう思われますか?

国立大田顯忠院を参拝したのは天安艦事件で犠牲になった将兵に対して功績を称える活動を保守政党としてこれまでしっかりやってこなかったという反省があり、それを改めるために参拝したといっています。つまり保守政党として伝統的に重視してきた「安全保障」を強調することで、革新系政党との差別化を図り、保守政党のイメージ戦略づくりにさっそく取り組んでいるように見えます。ところで、イ・ジュンソク代表にとって当面の重要課題は、来年の大統領選挙に「国民の力」として誰を候補に立てるのか、具体的には今、世論調査でトップに立っている前の検察総長ユン・ソギュル氏との関係をどうするのか、ということなのですが、日本のテレビのお昼のワイドショーでもその問題が詳しく解説されたということで、日本の人たちも注目していると思います。


来年3月の大統領選挙へ向けて、30代の野党党首の今後の活躍、期待しながら見守りたいと思います。

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