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ライフスタイル

韓国のデモとストライキ

#マル秘社会面 l 2022-06-15

玄海灘に立つ虹

ⓒ YONHAP News

韓国は民主化を大規模な国民参加のデモで勝ち取ったという歴史があるせいか、日本に比べて日常的にデモやストライキが多いような気がします。

今も韓国では大小のデモが連日起きており、大きなニュースになっています。一番大きなものが、最近、ニュースでもお伝えした貨物連帯、トラック運転手の労働組合によるストライキです。幸い、14日夜に妥結しましたが、今月7日から行われたストライキの影響で鉄鋼、セメント、自動車、石油化学など産業界の生産や出荷に支障が出て、被害総額はおよそ2兆ウォンに上ると言われています。

デモは貨物連帯のような全国的なゼネストだけではありません。小規模ながらも日々の暮らしに影響を与えているものもあります。代表的なのが障碍者団体の地下鉄デモです。   

障害者で構成された「全国障がい者差別撤廃連帯」という市民団体は、去年の12月から今年3月にかけて、通勤時間帯に地下鉄駅で発車しようとする列車のドアやホームドアが閉まるのを電動車椅子などで妨害し故意に列車の出発を遅らせる「抗議活動」を約30回にわたって行いました。そしてこの地下鉄デモがまた13日から地下鉄4号線で再開されました。このデモの影響で通勤ラッシュの地下鉄4号線に遅れが出て、地下鉄を利用する多数の市民に影響がでました。また韓国は電動車いすを利用している人が多く、電動車いすは大きく、重たく、頑丈で、混んだ車内ではある意味脅威となります。

市民団体がデモを行った理由は「障害者の移動する権利を保障せよ」「交通弱者」の自分たちが移動する権利が侵害されているという主張です。エスカレーターやエレベーターなど、障害者のための移動手段が整っていない場所がまだ多く、車椅子移動用リフトを利用していた障害者が転落して死亡した事故が発生するなど、安全の面でも課題は山積みです。特にバスに関しては車椅子で乗車できる車両は大きく不足しています。

そしてもう一つ話題になっているのが、ムン・ジェイン前大統領の私邸前で行われている保守団体や新型コロナウイルスのワクチン被害者団体によるデモです。任期を終えたムン前大統領は先月10日慶尚南道ヤンサンの住民100人という静かな村に移り住みました。しかしその翌日から私邸前では保守団体などによる大音響での誹謗中傷のデモが続いています。このため大統領夫妻はもちろん、村の住民まで騒音ストレスで大きな被害を浴びています。これに対してムン前大統領自身も自制を求める声明を出したりしましたが、あまり効果はないようです。またユン・ソンニョル大統領は記者の質問に対して「大統領執務室前のデモも許可されている状況なので、法に則って(処理)されるのではないか」と答えたという報道もありました。

貨物連帯のゼネスト、障碍者団体の地下鉄デモ、そしてムン前大統領の私邸前でのデモ、それぞれに理由はあります。特に障碍者のデモに関しては、弱者への批判や叱咤がタブー視されている「情」に弱い韓国社会では警察などもなかなか強い規制ができないでいます。

さらにデモを鎮圧する警察側の人力が今後大幅に減ることが予想されます。機動隊の代わりに主にデモの鎮圧にあたっていた義務警察官が現在は募集されておらず、2023年6月になれば警察から義務警察官自体が完全にいなくなります。その場合、今の半分ほどの人数2万人でデモの際の警備にあたることになります。そうなった場合、デモの鎮圧に新たな方法が加わるかもしれません。それが心配です。

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