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ライフスタイル

出生率と小児科医の不足

#マル秘社会面 l 2022-12-14

玄海灘に立つ虹

ⓒ Getty Images Bank

韓国の病院で小児科医が不足しています、一部の病院では入院診療を中断するところまで現れました。

仁川にあるキル病院は病床数が1450床の、病床数では国内第5位の総合病院です。この病院で今月12日、来年2月末まで暫定的に小児科の入院診療を中断すると発表しました。その理由として研修医の不足が挙げられています。キル病院小児科での研修医不足はすでに数年前から起きており、さらに来年上半期用の研修医募集で、4人定員の小児科に1人しか応募がありませんでした。現在この病院の小児科の医師は7人しかおらず、今後は研修医の定員が埋まり次第、入院診療を再開するということです。現在キル病院では1450病床のうち小児科の入院病床はわずか23病床です。

事情はどこの病院でも同じです。全国規模で見てみると、来年上半期の研修医募集で小児科の募集定員は199人でしたが、それに対する応募は33人に過ぎませんでした。そして定員に達しなかったのはキル病院だけではありません。ソウル大学病院でも定員14人のところに10人、サムスンソウル病院も定員6人のところに3人しか応募がありませんでした。地方にいけば状況はもっと深刻で一人の応募もない病院がほとんどです。このような状況は突然起こったことではありません。すでに2019年から小児科の研修医の志願者が急激に減っています。2019年は80%、2020年は74%、2021年は38%、そして今年は27.5%しか埋まりませんでした。

なぜ若い医師たちが小児科を避けるのでしょう。それは医療費が安いこと、そして医療紛争のリスクが高いことなどがあげられます。ソウル大学病院の小児科の教授は「地方の国立大学病院で働く同僚の医師たちは人手不足で、夜間の当直を行い、そのまま翌日も外来診療を続けるという生活が2,3年続いています。このような状況をこの先、1,2年は続けられるかもしれませんが、10年、20年は到底耐えられません」と言います。このような状況に対して保健福祉部では、大規模病院では小児科の医師を義務的に採用する、研修医を小児科に誘導するための公共政策を立てる、こども病院の運営赤字を補填するなどの対策が検討されています。

しかし小児科を志望する医師が少ない理由の一つは、韓国の世界最低の出生率にもありそうです。韓国の出生率についてアメリカのCNNも

「韓国が世界最低の合計特殊出生率(1人の女性が一生のうちに産む子どもの数の指標)の記録を更新している」とし、「いくら莫大な金を投入しても低出生率を阻止することは難しい。新たなアプローチが必要だ」と指摘しています。世界的に出生率は下がっていますが、韓国の場合、その減少速度が著しく速いことが問題です。安定した人口維持のためには合計出生率が2.1人以上あることが必要ですが、韓国はアメリカの1.6人、日本の1.3人よりも低い0.79人です。

そしてその背景についてCNNは高い住宅価格や教育費負担など経済的要因の他に、非常に興味深い指摘をしています。何かと言うと、韓国では「父母の資格」に対する暗黙的な規則が存在するというのです。韓国では子供を産むことは若い新婚夫婦に期待し、それ以外の家庭は子供を育てる資格が無いとされていると指摘します。未婚の女性への体外受精が禁止され、同性のカップルの結婚は認められず、事実婚関係の夫婦は養子をもらうことができない。一人暮らしの家庭、同性カップルなど多様な家庭の形態が社会的に認められれば、子供を産んで育てる可能性も増えるだろうというのがCNNの指摘です。

しかし韓国ではいまだに政治家は「一人で暮らす方が幸せだという認識が広まっているようだ。これからは結婚して子供を産むことが幸せだという認識が広まるように政策やキャンペーンを行っていく」と主張します。

CNNは最後に「多くの専門家は現在の資金を投入するだけの接近方法はあまりにも一次元的だと見ており、むしろ子供たちの人生を持続的に支援することが必要だ」と締めくくっています。このまま出生率が減少し続ければ、未来への希望が無いとして、ますます小児科の医師を目指す若者が減り続けることでしょう。このマイナスの循環を何とかプラスに変わらせる方法はないのでしょうか。

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