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ピープル

“楽器(づくり)はどこの国とか言うことでなく・・・” ~笙の簧(した)・リードは韓国産~

2014-07-25

日本の伝統楽器、笙を製作する京都の雅楽師、岡村厚さんが6月下旬、あるものを購入するために韓国を訪れました。7月の「見た!韓国の素顔」は、岡村さんが何を買い求めたのか、またその素顔に迫ります。



笙とは? 
長短17本の竹管で独特の音色を出す。ひちりきや竜笛などとならぶ日本の伝統楽器
奈良時代、ユネスコの無形文化遺産にも登録されている雅楽とともに、大陸から日本に伝わる

雅楽師、岡村厚さんのプロフィール
30歳のとき、好奇心から笙を作り始める。試行錯誤の末、半年で完成
その後、笙作りを本格化。5年で雅楽師へ

岡村さんが韓国を訪れた理由とは? 
笙の音を出す簧(した)・リードに使うため、銅の合金製の洗面器や銅鑼を購入
古いものがよく、ソウル市内の骨董品店などを巡り、50年ほど前のものを探す
       
買い求めるポイントは? 
「(手でたたいて)響きが長くなるのを買うんです。いつも買うときは冒険がある」 
「(日本のものはだめですか?)日本のものはリードに使えるものは見つからなかった。柔らかすぎて、笙の音がでなかった」(厚さん)

笙の簧(した)は? 
洗面器や銅鑼を小さな短冊状に切り、長さ2~3cm、幅5~6mm、厚さ0.7mmに加工
時に、思いどうりの音が出ず、今でも何時間も悩むことがある。これでは依頼主に呆れられると怖くなり、キャンセルして、作り直すことも

岡村さんのもう一つの韓国とのつながりは? 
韓国を訪れるたびに、すっかり魅了され、韓国語をマスター。アマチュア無線を通じてソウルに住んでいた美恵さんと知り合い、1988年結婚。ハム仲間から夫婦へ 

結婚して26年。美恵さんから厚さんへの思いは? 
漆で汚れたままの厚さんの手が、いつしかすごく美しく見えるようになったという美恵さん。ある日・
「最初は綺麗な手とは思わなかったが、今はその手がすごく美しく見える。(何も知らずに)申し訳
なかったと謝った。この汚れた手が私を食べさせてくれ、愛してくれたんだと。今は大事な手と思うよ
うになったと告白した」(美恵さん)

岡村さん夫妻に、今の冷却した韓日関係は? 
「一番大切なのは、個人個人のつきあいの中で、しっかりした結びつきができれば、そのうち何とかなる。そっちの問題の方が重要だとおもう」(厚さん)
「前は、新婚の夫婦のようで、今はこんなになってしまった。これは個人の間でもあること。私は、韓国人とか日本人とは思わず、人間としてどう生きるか・・・。お互い、関係が悪くても良くてもこの場で生きることが大事。自分がどんなことができるか考えたい」(美恵さん)

笙の簧(した)に韓国のものが欠かせないことについて・・・    
「楽器は、どこの国とか言うことではなく、いい音が出るかどうかで材料をとらえている。どこのものとかはこだわらない。自分が好きな国の材料が使えて嬉しい。これを通して、交流にもつながり、友達もできている」(厚さん)

韓国では、一端途絶えた笙を復活する動きが活発になってきています。岡村さんは、韓国の古い洗面器を素材に取り込んだ自らの笙との合奏できる日を心待ちにしています。
美恵さんが愛おしいという「岡村さんの手」が、今日も工房で笙づくりに励んでいます。  

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