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絵本「遅刻」

#ソウル・暮らしのおと l 2023-05-12

金曜ステーション

「바쁘다 바빠 현대사회(ああ忙しい、現代社会)」。そんな言葉が最近、韓国では流行語のように使われています。とにかく忙しい現代人。とくに朝の通勤時は、ただでさえ1分1秒が惜しいなか、ちょっとしたトラブルにもイライラしたり、ストレスがたまったりしてしまいますね。

きょうは、そんな朝の通勤ラッシュのひとときを描いた『遅刻(지각)』という絵本を紹介します。


ⓒ WISDOM HOUSE 

午前8時15分、忙しい通勤時間。漢江をわたる大橋の道路は渋滞が続いています。

そこへ、ちいさな子猫が車道に迷い込みました。タイヤをすり抜け、前に後ろに走りまわり、どこに行けばいいのかわからなくなってしまったようです。


バスの中から見守る人たちは、それぞれ心の中でつぶやきます。

「あんなに小さいのが、必死になって…」

「誰も助けてあげないのかしら」

「まさか、引かれてないよね?」

「つらくなるから、見ないでおこう」

「あーあ、今日も遅刻だ…」


ⓒ WISDOM HOUSE 

バスに乗った人々も、車を運転する人々も、朝から小さな命が事故に遭うのを見たくはありませんでした。でも、助けてあげられる人はいません。見ないふりをして通り過ぎても、誰も責めることはできない状況でした。

ところが。「キキーッ」と1台の車がとまりました。猫が見えなくなって胸がヒヤリとして、思わずブレーキを踏んだ人でした。「プップー!」周りでクラクションが鳴り響きます。

そのなかで、ちいさな鳴き声が聞こえました。「にゃおん、にゃおん」


ⓒ WISDOM HOUSE 

車をとめた人は急いで降りて、猫を拾い上げました。猫はぶるぶる震えていました。

――みんな遅刻しました。でも大丈夫。きょうは遅刻したってかまわない日です。


ⓒ WISDOM HOUSE こんなお話でした。

忙しい朝、しかも雨の降る中、大渋滞の道路に迷い込んだ子猫。みなさんならどうしますか?


シンプルなお話ですが、余裕のない日常生活でのジレンマをふと思いだしてしまいます。時間がなくて急いでいるとき、目の前に困っている人がいたら…? どうしても助けてあげられない状況で、助けを求められたら…?「自分じゃなくても誰かが助けてあげるだろう」「こっちも大変なんだから、仕方ない」とやり過ごしてしまうことも。むしろ、足止めされて迷惑だって苛立ってしまうこともあるかもしれません。


絵本では、ひとりが車をとめて猫を助けたために、みんな遅刻してしまったという締めくくりです。でも、「こんな日は遅刻したっていいんです」という締めくくりは、本当に優先しなきゃならないものは何だろう、ということを、優しく問いかけているように感じられます。


この絵本はまだ日本語での翻訳版は出ていませんが、内容の一部がブックトレーラーとして動画でアップされています。ぜひ見てみてください。

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