19日から21日にかけて広島で開かれたG7サミットを機に、尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領は、日本やアメリカをはじめとする自由民主主義諸国との連携を強化する姿勢を打ち出しました。
尹大統領は20日、岸田総理大臣とともに広島平和記念公園にある韓国人原爆犠牲者の慰霊碑を参拝したほか、韓日、韓日米の首脳会談を通して、韓日米3か国による連携を強化する姿勢を鮮明にしました。
また、ウクライナのゼレンスキー大統領とも初めて会談し、「韓国は自由と国際連帯、ルールに基づく国際秩序を重視している」と述べ、人道支援の拡充に向けて努力することを表明しました。
尹大統領はG7の期間中に、アメリカと日本、オーストラリア、インドの4か国の枠組み「クアッド」と、アメリカやイギリスなどが中国を念頭に設けた安全保障の新たな枠組み「AUKUS(オーカス)」、この2つのグループに参加する国、合わせて10か国以上の首脳と、二国間会談を行いました。
22日午後には、G7を終えて韓国を訪問するEU=ヨーロッパ連合のフォンデアライエン欧州委員長とミシェル欧州理事会常任議長と、ソウルで首脳会談を行います。
こうした一連の会談は、自由と法治、人権といった普遍的価値を追求する自由民主主義諸国との関係を強固にするとともに、尹政権が発足当初から強調してきた「グローバル中枢国家」としての役割の強化に向けた土台作りとして行われたものとみられます。
一方、今回のG7サミットで、各国は、中国、ロシア、そして北韓への対抗姿勢を鮮明にしています。
G7広島サミットで20日に採択された首脳声明は、ロシアによるウクライナ侵攻を強く批判しています。また、中国を念頭に、「力による一方的な現状変更に反対する」と強調したほか、北韓については、「国際平和と安全保障に深刻な脅威となる核実験や弾道ミサイルの発射をやめるべきだ」としています。
尹大統領も、21日の拡大会合で、「ウクライナと北韓の事例は、国際ルールと法治が守られてこそ、自由と平和を守ることができることを再認識させる。韓国はグローバル中枢国家を目指す国として、自由の価値と法治に基づいた国際秩序を強固にするため、G7と緊密に協力する」と強調しています。
ロシアや中国、北韓と対峙してG7各国と足並みを揃える韓国の方針が鮮明になりましたが、今後、中国やロシアとの関係では、外交の不確実性が高まると懸念する声も出ています。
中国外務省は、G7サミットで台湾海峡問題が取り上げられたことについて、20日の論評で、「強い不満と断固たる反対」を表明しており、ロシアのラブロフ外相も20日、「私たちに対する宣戦布告」として反発しています。