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6カ国協議

第5回6か国協議 (第2セッション)

概要

概要
日時と場所 2006年12月18~22日 北京
各国代表
  • 千英宇(チョン・ヨンウ)
    外交通商部韓半島平和交渉本部長
  • 金桂冠(キム・ケグァン)外務次官
  • ヒル国務省アジア太平洋担当次官補
  • 武大偉外務次官
  • 佐々江賢一郎外務省アジア大洋州局長
  • ラゾフ中国大使

結果

北韓が要求した「バンコデルタアジア」の資金凍結問題を扱う作業部会が開かれたが、全体的にはこれといった成果はなく、次回協議についても具体的な期日を決めることはできなかった。

議長声明の内容

1. 平和的に非核化を実現する意思を再確認。
2. 共同声明を誠実に履行する原則を再確認。
3. 履行と初期段階の措置について有用な協議。
4. できるだけ早い時期に次回協議を再開する。

第5回6カ国協議第2セッションの議長声明全文

第5回6カ国協議第2セッションが2006年12月18日から22日まで北京で開催された。

各国は6カ国協議の状況の変化と発展内容を点検し、平和的に韓半島の非核化を達成すべきだという共同の目標と意思を再確認した。
各国は共同声明の約束を誠実に履行することにし、「行動対行動」の原則にもとづいて、できるだけ早く共同声明の内容を履行するために調整された措置を取ることで一致した。各国は共同声明を履行するための措置と、初期段階に取るべき措置について有用な協議を進め、いくつかの具体的な案も提示した。各国は集中的な2国間協議を通じて、それぞれ憂慮する事柄について率直に意見を交換した。
各国は今回の協議を休会し、本国での検討を経て、もっとも早い機会に協議を再開することにした。

協議の経過

北韓のミサイル発射と核実験などで状況が悪化した後に初めて開かれる協議ということで、局面を打開できる成果を収められるかどうかに関心が寄せられた。
北韓は「バンコデルタアジア」問題に執着したのに対して、アメリカはこの問題は6カ国協議とは分離して話し合うべきだとして、双方は平行線をたどった。

協議の経過

  • 北韓
    バンコデルタアジア問題が先決-バンコデルタアジア問題が解決した後で核放棄に就いて論議できる。
  • アメリカ
    早期収穫-北韓の核放棄の意思を検証するためにいくつかの初期段階の措置を取り、非核化に向けた次の段階の措置については初期段階の措置を履行する過程で話し合う。アメリカは11月末に北京で行われた米中朝の3カ国による協議で、こうした案を提示したが、今回の協議で北韓は具体的な返答をしなかった。
  • 韓国
    パッケージ解決案-核放棄の通常の順序にしたがって、ことば対ことば、つまり一つ一つの措置を組み合わせて措置を取る方式をやめて、それぞれの措置を核放棄と見返り措置という大きな一つのパッケージにして交渉を進める。
    アメリカの「早期収穫」と基本的には同じだが、北韓が要求しているバンコデルタアジア問題も含めることで米朝間の仲裁を図る。

主な争点

  • 「バンコデルタアジア」 問題

    マカオの中国系銀行「バンコデルタアジア」に2400万ドル相当の北韓関連資金が凍結された。北韓はこうした状況をアメリカによる金融制裁だとして、核問題を論議する前にこの問題を解決するよう求めた。しかし、アメリカはこの問題は法律的な問題なので、交渉の対象ではないとして、北韓の要求に応じなかった。このため6カ国協議は13カ月間も開かれず、その間に北韓は核実験を行った。

    う余曲折の末に協議が再開されたが、北韓は依然として「バンコデルタアジア」問題に執着し、アメリカは北韓の要求に応じなかったため、他の問題について実質的な話し合いを進めることはできなかった。
  • 「バンコデルタアジア」問題の実務者協議

    北韓の執拗な要求で、「バンコデルタアジア」問題について北韓とアメリカの高官による実務者協議が19日から20日にかけて、6カ国協議とは別に北京で行われた。

    この実務者協議では、アメリカが「バンコデルタアジア」の法的な問題について説明し、北韓もアメリカの前向きな姿勢を肯定的に評価した。しかし北韓はこの問題がアメリカによる金融制裁だと主張し、アメリカは法的な問題なので交渉の対象ではないとする従来の立場を曲げず対立は解消できなかった。成果はなかったが、2007年1月に実務者協議を再開することに合意し、期待感を残した。
  • 初期段階の措置

    北韓の核放棄の意思を確認できる初期段階の措置は、アメリカが11月末に北京で開かれた米朝中3カ国による会合で提示した。 核問題の解決は、北韓が核を放棄する意思をはっきり表明し、それを履行することから始まるので、その時点で関係各国がそれに相応する措置を取ることを意味する。 相応する措置の中で最も先に取られる措置が初期段階の措置だ。この初期段階の措置を細分することなく包括的に取り扱うことで、よりスムーズに協議を進展させる目的がある。

    アメリカが要求した北韓による初期段階の措置は、
    ▲寧辺の原子炉の運転中止、
    ▲国際原子力機関(IAEA)の査察受け入れ、
    ▲核計画の申告、
    ▲核実験場の閉鎖などだ。

    北韓がこれらの初期段階の措置を履行した際の見返り措置は、北韓関連資金の凍結解除やエネルギー支援などだ。 アメリカは協議が始まる前に、北韓の体制安全を保障する用意があると表明していた。

評価

  • 変化した北韓の戦略
    今回の協議で北韓の戦略が変化した。北韓は核兵器と核計画を分離して扱うことを求めた。問題を二つに分離することでより大きな見返りを得ようという戦略とみられる。
  • 北韓は「バンコデルタアジア」問題に執着

    北韓は最後まで「バンコデルタアジア」問題に執着し、協議全体の進展の妨げとなった。核凍結または核放棄についても、北韓はこれまでとは違った立場を示した。
    核兵器は放棄できないという立場を示していた北韓は、協議2日目の19日、「バンコデルタアジア問題が解決し、条件が整えば核放棄に向けた初期段階の措置を取る用意がある」として、進展に対する期待が高まったこともあった。しかし、北韓は「バンコデルタアジア」以外の問題については話し合いに応じず、協議は進展しなかった。
  • 依然として米朝の不信感は強いまま協議が空転したのは、表面的には北韓が「バンコデルタアジア」問題に執着したためだが、中身をよく見ると、アメリカと北韓の相互不信が問題の核心だった。そのためアメリカは北韓に対して先に検証を要求し、北韓はアメリカが先に「バンコデルタアジア」問題を解決するよう求めた。

6カ国の得失

得失
韓国 パッケージ解決案を示し、仲裁者としての役割を果たしたが、成果はなかった。
北韓 バンコデルタアジア問題を表面化させ、この問題でアメリカとの2国間対話を実現させた。
しかし、そのために韓国と中国による経済支援は不透明になった。
アメリカアメリカ 北韓の意図を明確に把握することができた。
具体的な成果がなく、北韓に対する制裁を強化する可能性も出てきた。
中国 協議が再開され、議長国としての体面を保ったが、北韓を説得できず、北韓に対する影響力に疑問が提起された。
日本 これといった所得はなかった。
拉致問題でも収穫はなく、北韓との関係はさらに悪化した。
ロシア アメリカと北韓の間で仲裁者の役割を果たしたが、これといった成果はなく、北東アジアにおけるロシアの影響力は縮小した。

展望と課題

  • 最も早い機会
    今回の議長声明では、次回協議を最も早い機会に再開するとしたが、これは前回の議長声明の「できるだけ早い時期」よりもあいまいな表現だと指摘された。 協議再開の面では前回の協議よりも成果がなかったと言える。
    一方、アメリカと日本で6カ国協議無用論が台頭し、早い時期に協議が再開される可能性は低いとの見方が強まった。
  • 「バンコデルタアジア」問題の作業部会
    今回の協議では、北韓が執着している「バンコデルタアジア」の北韓関連資金凍結問題をどんな形であれ乗り越えなければ、6カ国協議の進展も期待できないことが克明になった。
    2007年1月に予定されていたアメリカと北韓による実務者協議の結果が、今後の6カ国協議の行方を左右するものとみられる。しかし、北韓は実務者協議の場所をニューヨークではなく北京に移すよう求めるなど、実務者協議が予定どおり開かれるかどうかも不透明な状況となった。

休会

いずれにしても各国は休会期間中にそれぞれ解決策を模索することになる。
しかし、次回協議が2007年1月中に再開される可能性は低いとの見方が強まった。
アメリカや日本で6カ国協議無用論が台頭し、強硬派の声も大きくなっている。
こうした状況は北韓にとって決して望ましくない。こうした状況で北韓が次回協議に積極的に応じるかどうかは不確実だ。