概要
日時と場所 |
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各国代表 |
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結果
開会直前にアメリカと北韓はバンコデルタアジアの北韓関連口座の凍結を全て解除することで合意したため、協議は順調に進展するものと予想されたが、北韓は、バンコデルタアジアに凍結されている資金が北韓が指定した口座に振り込まれた後で協議に応じるという立場を固守した。技術的な問題で資金の振込みがスムーズに行われなかったため、協議は進展することなく、次回協議の日程も決められないまま休会することになった。
合意事項
具体的な合意事項はなく、原則的な内容だけを再確認するのにとどまる。
- 6カ国協議の枠組みの中で協議を継続。
- 9.19共同声明と2.13合意の誠実な履行。
- できるだけ早い時期に協議を再開。
議長声明全文
第6回第1セッションの協議が2007年3月19日から22日まで北京で行われた。
各国は5つの作業部会の報告を聴取し、初期段階の措置履行と次の段階の行動計画について論議を進めた。各国は6カ国協議を継続して進展させていくことで合意した。各国は2005年の9.19共同声明と2007年2月13日に採択された「共同声明履行のための初期段階の措置」の合意を誠実に履行することを再確認した。各国は休会に合意し、次の段階の行動計画を持続的に論議するためにできるだけ早い時期に協議を再開することにした。
協議の経過
- 作業部会
2.13合意にもとづく5つの作業部会は6カ国協議の本会談を前にして、それぞれの議題について具体的な論議を進めた。米朝関係正常化と日朝関係正常化の作業部会がアメリカとベトナムでそれぞれ開かれ、韓半島の非核化、経済とエネルギー支援協力、北東アジアの平和・安全保障体制構築の3つの作業部会は本会談直前の15日から17日に北京で開かれた。 - 開幕
本会談の開幕を前にしてアメリカと北韓がバンコデルタアジアの北韓関連資金の凍結を解除することに合意し、具体的な進展が期待された。
初期段階の措置として60日以内に履行しなければならない核施設の閉鎖と封印、その次の段階である核施設の無能力化と核計画の申告についての行程表を作ることと、その見返り措置について合意することを目標に協議が進められるはずだった。
19日に各国の首席代表が基調演説を行った。
北韓の金桂冠外務次官は基調演説で、「バンコデルタアジアの資金の凍結が完全に解除されれば、そのときに寧辺の核活動を中止する」とし、「北京に春が訪れた」と述べ、初期段階措置を早い時期に履行する意向を表明した。 - 北韓が協議を拒否
しかし、北韓はバンコデルタアジアの資金の返還が完結されるまでは協議に応じることができないとして、協議はすぐに中断された。
北韓の金桂冠首席代表は、宿所の中国駐在北韓大使館から出てこなかった。
実務者レベルの協議が部分的に行われたが、実質的な論議は進められなかった。 - 休会
休会という方法で会期が延長されたが、バンコデルタアジアの北韓関連資金の返還に必要な手続きが思ったより複雑で、簡単に解決できないことが分かった。
北韓の首席代表が会議場に出てこない以上、協議を続けるのは不可能だ。北韓の代表団は資金の返還問題が解決されない限り会議場に出てこないという立場を固守した。
結局は北韓の金桂冠首席代表が22日、北京を後にして帰国し、次回協議の日程も決められないまま休会を宣言するしかなかった。
主要争点と結果
争点
当初は作業部会の報告聴取、初期段階の措置の履行状況点検、核施設の無能力化と核計画の申告、つまり非核化の行程表を作り、その見返り措置などを論議する予定だったが、議題ではなかったバンコデルタアジアの北韓関連資金問題、それも資金の返還に伴う手続き上の技術的な問題が争点になってしまった。
- バンコデルタアジア問題
アメリカと北韓はバンコデルタアジアに凍結されている北韓関連資金2400万ドル全額を凍結解除することで合意したが、まだその資金が北韓の手に入ったわけではなかった。国際金融システムの中で北韓が指定した口座に資金を送金するには手続き上の技術的な問題があった。最初からこのような問題を十分検討していれば、協議が中断されるようなことがなかったはずだ。資金を送金するには口座を所有している人の要請が必要だが、北韓の資金は架空の名義の口座や、実在人物であってもすでに死亡した場合があるなど、書類をそろえることができない状態だった。
そのため北韓が指定した口座の金融機関が資金を受け取ることを拒否するなどの問題が生じ、問題が複雑になった。
バンコデルタアジア | 口座の持ち主が送金を要請すべき。 |
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北韓 | - 国際金融システムへの理解が不足し、無条件送金を要求。 - 個人や企業名義の50あまりの口座の書類を準備できず、資金を受け取る方法が見つからない。 |
送金先 | - 中国の金融機関が資金受け取りを拒否。 違法な資金を受け取ることによる信用の低下などを憂慮。 |
評価
予期していなかった問題で協議は暗礁にぶつかった。技術的な問題によって協議が中断され、具体的な進展は何もなかった。しかし、作業部会の活動が軌道に乗ったこと、北韓が合意を履行する意思を再確認したことは、それなりの成果だと言える。
この協議は、これから先にまだ解決しなければならない難題が多く残っていることを示すものだった。
展望と課題
- 初期段階の措置の履行は楽観的
この協議は決裂というよりは単純なハプニングだったと言える。
北韓関連資金の問題が解決すれば、北韓は核施設の運転を停止することをはじめとする初期段階の措置の履行に踏み切る可能性が高い。休会で時間を無駄にしたため、資金の問題さえ解決すれば、北韓がさらに積極的に問題に取り組む可能性もあるという見方も出た。北韓が60日以内に履行しなければならない核施設の閉鎖や封印、IAEAの監視団の入国などに協力する意向を表明したからだ。金桂冠首席代表は会議場に出てこなかったが、北韓の実務者が作業部会に持続的に応じたことなどで、初期段階の措置の履行について楽観的だとする見方が強まった。
1 | 核施設の閉鎖、封印の時期と対象について協議。 (北韓と国際原子力機関(IAEA)) | 寧辺の放射化学実験室など5つの核施設の運転停止。 |
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2 | IAEA監視団が北韓に入国 | 10人あまりが北韓入り。 |
3 | 閉鎖 | 北韓が核施設の閉鎖に着手。 |
4 | 封印 | IAEA監視団が封印措置を履行。 |
バンコデルタアジア問題解決
すでに資金の凍結を解除することで合意しているので、解決は時間の問題だ。
金融システムの手続き上の問題さえ解決すれば、資金は北韓の手に入ることが確実だ。とは言っても簡単な問題ではない。
アメリカと日本の強硬派の台頭
協議が中断されたことでアメリカと日本で強硬派の声が強まることが予想される。
そうなれば協議が再開されても、速度は落ちる可能性がある。こうした問題を克服するのも一つの課題だ。
北韓の交渉態度に関する各国の対応
今回の協議では、北韓首脳部の硬直した態度、裁量権のない北韓の代表団などに、参加国は不満を持った。こうした要素が複合的に作用すれば、6カ国協議の枠組み自体が崩れる可能性がある。こうした問題をいかに克服するかが、協議を再開し、進展を期することができるかを左右するだろう。