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6カ国協議

第6回6か国協議 (第2セッション)

概要

概要
日時と場所 2007年9月27~30日 北京
各国代表
  • 千英宇(チョン・ヨンウ)
    外交通商部韓半島平和交渉本部長
  • 金桂冠(キム・ケグァン)外務次官
  • ヒル国務省アジア太平洋担当次官補
  • 武大偉外務次官
  • 佐々江賢一郎外務省アジア大洋州局長
  • アレクサンドル・ロシュコフ外務次官

結果

首席代表会合と作業部会で調整された議題について協議が進められ、進展の期待は大きかったが、第2段階の措置を履行するための具体的な方法と日程について合意に達するのは簡単ではなく、難航が予想された。結果的には第2段階の措置を履行するための行程表の作成に成功し、一歩前進を成し遂げた。

合意事項

· 北韓は核施設の無能力化を2007年12月31日までに完了。
· 北韓は2007年12月31日までに核計画の申告を完了。
· 北韓は核物質と核技術を第三国に移転しないことを再確認。
· 米朝関係正常化の合意を維持。(テロ支援国指定解除の手続き開始)
· 日朝関係正常化に向けて努力。
· 2・13合意にもとづいて北韓に経済・エネルギー支援を提供。
· 6カ国外相会談を開催。

< 合意文の全文 >
9・19共同声明履行のための第2段階の措置

2007年10月3日

第6回6カ国協議第2セッションが北京で、中華人民共和国、朝鮮民主主義人民共和国、日本、大韓民国、ロシア連邦、アメリカ合衆国が参加して、2007年9月27日から30日まで開催された。

中国の武大偉外務次官、朝鮮民主主義人民共和国の金桂冠外務次官、日本の佐々江賢一郎外務省アジア大洋州局長 大韓民国の千英宇外交通商部韓半島平和交渉本部長、ロシアのアレクサンドル・ロシュコフ外務次官、アメリカのクリストファー・ヒル国務次官補が首席代表として出席した。

武大偉外務次官が議長を務めた。

参加国は5つの作業部会の報告を聴取し、これを支持するとともに、2・13合意にもとづく初期段階の措置を履行することを確認、作業部会での合意にもとづいて6カ国協議を進展させていくことで合意した。また、平和的な方法で韓半島の検証可能な非核化を目指すとした9・19共同声明を履行するための第2段階の措置についての合意に達した。

Ⅰ. 韓半島の非核化

1. 朝鮮民主主義共和国は9・19共同声明と2・13合意にもとづいて放棄することにした、すべての現存する核施設を無能力化することに合意した。

寧辺の5000キロワット実験用原子炉、再処理施設(放射化学実験室)と核燃料棒製造施設の無能力化は2007年12月31日までに完了する。 作業部会が勧告する具体的な措置は、すべての参加国が受け入れることができ、科学的かつ安全、検証可能、また、国際基準に沿った原則にもとづいて首席代表が採択する。

他の参加国の要請にもとづいてアメリカ合衆国は無能力化作業を主導し、こうした活動の初期に必要な資金を提供する。 最初の措置として、アメリカ合衆国は無能力化作業を準備するため、2週間以内に朝鮮民主主義人民共和国を訪問する専門家グループを主導する。

2. 朝鮮民主主義人民共和国は2・13合意にもとづいて、すべての核計画についての完全かつ正確な申告を2007年12月31日までに提出することで合意した。

3.朝鮮民主主義人民共和国は、核物質、核関連技術とノウハウを第三国に移転しないという約束を再確認した。

Ⅱ. 関係国の関係正常化

1. 朝鮮民主主義人民共和国とアメリカ合衆国は2国間の関係を改善し、全面的な外交関係樹立に向けて努力するという約束を維持する。双方は2国間の交流を増大し、相互信頼を増進する。朝鮮民主主義人民共和国をテロ支援国指定から解除するための過程を開始し、また、朝鮮民主主義人民共和国に対する適性国貿易法の適用を終了させるための過程を進展させるという約束を想起し、アメリカ合衆国は米朝関係正常化の作業部会を通じて到達した合意にもとづいて、朝鮮民主主義人民共和国の措置と並行して、朝鮮民主主義人民共和国に対する約束を完遂する。

2 .朝鮮民主主義人民共和国と日本は、不幸な過去と未解決の関心事を解決すること基盤に、平壌宣言にもとづいて2国間の関係を速やかに正常化するために努力する。朝鮮民主主義人民共和国と日本は、2国間の集中的な協議を通じて、目的を達成するための具体的な措置を取っていくことを約束した。

Ⅲ. 朝鮮民主主義人民共和国への経済・エネルギー支援

2・13合意にもとづいて、重油100万トン相当の経済・エネルギー支援(すでに北韓に提供した重油10万トンを含む)を朝鮮民主主義人民共和国に提供する。
具体的な事項は経済・エネルギー協力作業部会の協議を通じて最終的に決定する。

Ⅳ. 6カ国閣僚級会談

参加国は適切な時期に北京で6カ国閣僚級会談を開催することを再確認した。

参加国は閣僚級会談開催以前に、この会談の議題について協議するため、首席代表会合を開くことで合意した。

会議の経過

2007年3月に開かれた第6回6カ国協議第1セッションは、BDAの北韓関連資金の返還が遅れたために決裂したが、今回の協議を通じて6カ国協議の枠組みが正常化された。

  • 首席代表会合
    第2セッションに先立って2007年7月に北京で6カ国の首席代表会合が開かれ、すでに合意した原則を調整した後、第2セッションが開かれた。それだけに、少なくない進展が期待された。
  • 作業部会
    7月の首席代表会合の合意にもとづいて5つの作業部会(韓半島非核化、米朝関係正常化、日朝関係正常化、経済・エネルギー協力、北東アジア平和・安保体制構築)が開催され、第2段階の措置を履行するための具体的な懸案を調整した。
  • 行程表の作成 作業部会と6カ国間の調整を通じて、9・19共同声明を履行するための第2段階の措置について合意した。この合意は具体的で、第2段階の措置を履行するための行程表と言える。
  • 10・3合意
    協議で合意された内容をもとに文案の作成が始まった。協議はいったん散会することにし、議長国の中国が文案を作成して、参加国がこれを回覧、内容を調整して発表された。

主な争点と結果

  • 争点
    第2段階の措置の二つの軸である「核施設の無能力化」と「核計画の申告」の形式と範囲、期限など、具体的な事項を決めるのが最大の課題だった。また、北韓の措置に相応する見返り措置、つまり経済・エネルギー支援、テロ支援国指定解除、適性国貿易法の適用除外などの履行も重要な争点だった。
  • 無能力化
    無能力化の対象、方法、期限などを決めるのが重要な課題だった。

    その結果は次の通り。
    ◆無能力化の対象は寧辺の5000キロワット実験用原子炉、再処理施設(放射化学実験室)と核燃料棒製造施設。
    ◆2007年12月31日までに無能力化を完了する。
    ◆具体的な方法は、すべての参加国が受け入れることができ、科学的かつ安全、検証可能、また、国際基準に沿った原則にもとづいて、首席代表らが追って決める。
    ◆無能力化作業はアメリカが主導し、初期に必要な資金を提供する。
    ◆アメリカが主導する専門家グループが2週間以内の北韓を訪問する。
  • 核計画の申告
    核計画の申告は複雑で微妙な問題だ。協議では、核計画の申告は、△完全で、△正確な申告を原則とし、△期限は2007年12月31日までに完了することで合意した。結局、核計画申告の範囲と方法など、具体的な事項は次の課題として持ち越された。
  • 核拡散
    核拡散問題は、アメリカが疑惑を提起し北韓はこれを否定している。それだけに双方の隔たりを埋めるのは簡単ではない。結局、「朝鮮民主主義人民共和国は、核物質、核技術とノウハウを第三国に移転しないという約束を再確認する」という表現で調整された。疑惑については具体的に触れておらず、この問題は今後とも問題となる可能性がある。
  • テロ支援国指定解除
    北韓が最も重視している問題だ。アメリカとしては、テロ支援国指定を解除することは、北韓との協議に必要な重要なカードを放棄することになり、簡単に譲歩することはできない。
    そのため、「アメリカは北韓のテロ支援国指定解除のための作業を開始する」という表現にとどまった。この問題も、今後協議を進める過程で、核施設の無能力化や核計画の申告と連携して再び問題になる可能性が残っている。

評価

核問題の解決に向けて、実質的な非核化の段階に進むための行程表を作成したことは大きな意義がある。初期段階の措置は、「北韓の核施設の稼動中断」という概略的な措置だったとすれば、第2段階の措置は核施設の無能力化と核計画の申告という実質的な段階に向けて出発したことを意味する。それだけに微妙な問題も山積している。

第6回6カ国協議第2セッションの結果は、すべてを充足し、満足させるものではなかったが、具体的な行程表が作成されたのは高く評価すべきであろう。北韓の核放棄に向けた具体的な措置を明記する一方、「見返り措置」も具体性を帯びてきた。

無能力化と核計画の申告の期限を2007年12月31日と明記したのは、行程表どおりに措置を取っていくという参加国の意思を反映したものだ。

無能力化の技術的問題は、専門家グループが現場を訪問し、北韓側の関係者と協議する必要があり、核計画申告の具体的内容を追って協議することにしたのは、第2段階の措置を進めていくうえで障害となりえる。

にもかかわらず、第6回6カ国協議第2セッションは、10・3合意を成し遂げたという点を考えると大きな成果があったと言えるだろう。

展望と課題

10・3合意によって核問題の解決は急進展することになった。実際の「行動」の段階に入ったのだ。しかし、BDA問題の例からも分かるように、協議を進める過程で予期できない障害物が出てくる可能性はある。今後の課題は、将来出てくる可能性がある障害物を取り除くことだ。

  • 無能力化の範囲
    合意文では包括的に核施設を列挙しているが、実際にどの設備と部品を含めるのか。それらをどのように無能力化するのかは、専門家グループが協議を通じて決定しなければならない。
    この過程で米朝が対立する可能性はいくらでもある。
  • 核計画の申告
    最も複雑で微妙な問題だ。アメリカと北韓のし烈な駆け引きが予想される。
  • テロ支援国指定解除
    核施設の無能力化・核計画の申告と連携している問題だ。これに比べると経済・エネルギー支援は簡単な問題だ。