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金正恩委員長、権力承継から10年

今週のキーワード2021-12-25

ⓒYONHAP News

金正日国防委員長が死去したのは2011年12月で、息子の金正恩氏が最高指導者の座に就き、金正恩体制になってからちょうど10年となります。

金正恩国務委員長は当時27歳で、権力の座を成功裡に引き継ぐことができるのか疑問視する声さえありました。

金正恩委員長は最高指導者の座に就くと、叔父の張成沢(チャン・ソンテク)元国防副委員長を含む数百人を処刑するなど、反対勢力を次々と粛清し、権力の座を固めていきました。

金正恩委員長は今年1月に開催された労働党大会で労働党総書記に推戴され、北韓のメディアは最近、金正恩委員長について、首領という肩書を頻繁に使うなど、故金日成主席や故金正日国防委員長に並ぶ確固たる最高指導者として君臨しています。

故金正日国防委員長は軍を最優先する先軍政治を前面に掲げ、権威を重視する統治スタイルでしたが、金正恩委員長は、軍ではなく、労働党中心の体制を導入しました。

権力の中心を軍ではなく労働党に移し、軍部の既得権を弱体化させることで軍を完全に掌握し、けん制するためだったとみられます。

権力基盤を固める一方で、金正恩委員長は核開発と経済発展の並進路線を掲げ、核兵器や弾道ミサイルの開発に力を入れました。

金正恩委員長の体制になってから10年間、北韓は6回の核実験を行い、60回余りの弾道ミサイルの試験発射を行いました。

2017年11月29日にはアメリカ本土が射程に入る大陸間弾道ミサイルICBMの試験発射を行いました。

一方で、市場経済のシステムを部分的に導入、国営企業の経営の自主権を拡大し、野外市場のチャンマダンを活性化させるなどして、一時は経済発展もそれなりに成果を収めるのではないかとみられました。

しかし、核兵器や弾道ミサイルの開発を続けることで国際社会の制裁は強まり、孤立を深めることで、経済は悪化の一途をたどっています。

経済が悪化すると、金正恩委員長は2018年に「経済建設に総力集中」のスローガンを掲げ、韓国やアメリカとの対話に動き出し、局面転換を図りました。

史上初めて米朝首脳会談が行われ、何らかの妥協点を見出すのではないかと期待されましたが、2019年2月にベトナムのハノイで開かれた2回目の米朝首脳会談は決裂、金正恩委員長の局面転換の試みは水の泡になりました。

一方で、新型コロナウイルスの影響で中国との国境を封鎖、自然災害まで重なって、経済はさらに悪化し、出口が見えない状況です。

金正恩委員長の体制10年間は、大々的な粛清を通じて権力の座を固め、核兵器や弾道ミサイルの開発ではそれなりの成果を収めたものの、核開発にすべての資源を投入した結果、経済はどん底まで落ち込み、国際社会で孤立が深める結果を招いたと指摘されています。

南北関係や米中関係も改善の兆しは見えません。

バイデン政権は北韓に対して対話を促していますが、北韓は応じていません。韓国では来年3月に大統領選挙が予定されていて、南北関係も流動的な状態です。

金正恩体制の次の10年は不透明で見通せない状況です。

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