パク・チャヌク監督作
2024-06-05
地下鉄が開通したという新聞記事を読んだチョじいさんは、
翌朝、孫のギユンといっしょに出かけた。
地下鉄を見物しに行くのだ。
片手に弁当箱を包んだ風呂敷がある。
この日の外出はただ地下鉄に乗るのではなく、
遠足なのだ。
地下鉄に向けるチョじいさんの好奇心は人一倍強い。
それもそのはず。
彼は昔、電車の運転士だったのだ。
滑るように走ってきた地下鉄が止まり、自動ドアが開くと、
チョじいさんとギユンは電車に乗り、席に座りました。
天井に扇風機が設置されていて、
夏なのに暑くありません。
車内の広告板、ぴかぴか光る棚、
ゆらゆらと動く丸い手すり、柔らかくふかふかした座席まで、
地下鉄の中は別世界のようでした。
스르르, 차가 멈추고 자동으로 문이 열리자
조주사와 기윤이는 들어가 자리를 잡았습니다.
천정에 줄지어 매달린 선풍기가 빙긍빙글 도는데
도무지 여름 같지 않고 시원했습니다.
거기다 차내를 장식하고 있는 광고판에,
반짝거리는 쇠로 된 선반,
가지런히 대롱거리는 동그란 손잡이들,
부드럽고 푹신한 좌석까지 그야말로 별천지였습니다.
#インタビュー:文芸評論家 チョン・ソヨンさん
小説の背景となっているのは韓国の最初の地下鉄が開通した1974年のソウルで、作者は年老いた電車運転士の視線で時代の変化、時代の流れを捉えています。地下鉄が開通するまでソウルの主な交通手段はトラムと呼ばれた路面電車でした。路面電車は1899年、朝鮮時代末期に導入され、長い間、ソウル市内を走っていました。ところが、1950年代に入ってソウルの人口が百万人を越えると、新しい交通手段が必要となり、1968年、路面電車の運行を中断し、地下鉄が導入されました。大学で土木学を専攻した作家、河瑾燦(ハ・グンチャン)は、その変化を誰よりも機敏に観察していたことでしょう。清涼里(チョンニャンニ)駅の描写も、そんな河瑾燦(ハ・グンチャン)ならではの立体感が感じられます。
ドアは三つだ。
前後の小さなドアは乗車用で、
真ん中の大きなドアは下車用だ。
昔の電車の中では新型に当たる。
窓にガラスは張られていない。
抜け殻だけが安置されているのだ。
電車の周りに張り巡らされた鉄柵の前に立ったチョじいさんは
目頭が熱くなった。
古い友人の衰えてしまった姿を見たような気分とでも言おうか。
懐かしさもあったが、不憫で、寂しかった。
彼は30年あまりの歳月を電車と共に生きてきたのだ。
ところが、数年前、地下鉄の建設ブームによって、
電車とともに彼の人生も押し出されてしまった。
문은 세 개다.
앞쪽과 뒤쪽의 작은 문은 타는 문이고,
가운데의 큰 문은 내리는 문이다.
그러니까 옛 전차 중에서는 신형인 큰 놈이다.
창문에 유리는 붙어 있지가 않다.
형해(形骸)만 안치해 놓은 것이다.
전차 주위를 두르고 있는 철책 앞에 와 선 조 주사는
코허리가 약간 시큰해지는 느낌이다.
옛날 정다웠던 친구의 퇴락한 모습을 보는 듯한 기분이라고나 할까.
반가우면서도 약간 민망스럽기도 하고, 쓸쓸하기도 하고....
그는 삼십여 년이라는 세월을 전차와 함께 살아왔던 것이다.
그런데 몇 해 전에 지하철 건설 바람에 그만
전차와 함께 자기의 인생도 밀려나버리고 말았다.
作家:河瑾燦(ハ・グンチャン) (1931.10.21.~2007.11.25、慶尚北道永川郡生まれ)
デビュー:1957年 短編小説「受難二代」
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