コシウォン、何をする所かご存知でしょうか。
まず言葉の意味からみてみましょう。コシ(考試)というのは、司法試験や国家試験(外交官試験など)をひっくるめて呼ぶ言葉です。つまり、コシウォンというのは、こうした試験の受験生が借りて勉強に打ち込むための部屋が複数ある住居施設のことです。勉強に集中するための部屋ですから、広さは勉強机と本棚を置き、横になれるスペースがとれるぐらいです。小さくて3平米余りから大きくても9平米くらいでしょう。トイレと洗濯は共同で、浴室はありません。コシウォンが密集している所はコシウォンチョン(村)と呼ばれ、ソウルではソウル大学前が代表的なコシウォン村です。
ただ最近ではコシウォンの本来の目的である「勉強」より「宿泊」を目的に入居する人が増えています。受験生だけでなく、地方からソウルにやってきた大学生やサラリーマンが多く住むようになりました。こうした傾向からコシウォンの数も増え続けています。市民団体「透明な社会のための情報公開センター」が先月公開した全国のコシウォンの現状についての資料によりますと、2009年現在、全国のコシウォンの数は6126ヶ所でした。全国でコシウォンが一番多いのはソウルで、3838ヶ所と、全体の60%を超えていました。2007年より40%増えたことになるそうです。
コシウォンがこのように増えている理由は、一言で言うと「不況」でしょう。韓国ではサラリーマンや学生が一人暮らしをする場合、「ワンルーム」と呼ばれる住居が多く利用されています。文字どおり部屋はひとつですが、台所やトイレなどが付いていて不便はありません。でも不況が続き、ワンルームの家賃が負担だという理由で、コシウォンに引っ越した人が増えたのです。ではどれぐらいの数がコシウォンに住んでいるかというと、2008年現在、ソウルでコシウォンを利用している人は10万8428人。10万人というとソウルの人口の1%に当たります。ちなみに勉強ではなく宿泊目的で住んでいるという人は、そのうちの60%、6万2078人でした。
コシウォンを利用する人が増えているため、ワンルーム並みのコシウォンも出てきました。新婚夫婦が新居として利用する場合もあるそうです。こうした「高級」なコシウォンの家賃は保証金なしの月々40万台から60万台。でも「普通」のコシウォンは月20万ウォンから30万ウォン台で、窓がない部屋は月10万ウォン余りで借りれるということです。コシウォンは長い間正式な住居施設として認められていなかったため、火災などの事故に無防備でした。それが去年7月にあった建築法施行令の改正で、合法的な建築物となり、法の管理を受けることになりました。それでもマンションなど普通の住居施設とは違って、スプリンクラーの設置義務を免除されるなど、依然火災の危険と隣り合わせではあります。それでも必要最小限のスペースを安く借りれるコシウォンは、景気が回復しても、利用者は減らないような気がします。