韓国では旧正月が本当のお正月です。
1月1日から新年だという認識はもちろんありますが、親戚など一家が集まって祭祀を行うなどお正月の儀式を行うのは旧正月、ソルナルだという家庭が圧倒的に多いのが現状です。
韓国は新羅時代の7世紀ごろから旧正月を正月としてきました。それが朝鮮時代末期の1896年、陽歴の1月1日が公式の正月と指定されます。このときの経緯は定かではありませんが、とにかくこのとき以降、公式には陽暦の1月1日が正月でした。でも実際にはそれまでどおり、旧正月を正月として祭祀などを行う家庭が圧倒的だったということです。そのあと植民地時代にも陽暦の1月1日が公式的な正月でした。そして1949年には当時の李承晩(イ・スンマン)大統領(アメリカ滞在歴が長く、徹底した陽暦の信奉者だとされる)が、正月は2度あってはならない、陽暦の正月か旧暦の正月かどちらかを選んで正月とすべきだと法律で定めました。表向きは国民に選ぶようにしていますが、1月1日から3日までの3日間を連休としてしまったので、事実上陽暦の1月1日を正月にするようにという強要になったわけです。それでも古くからの慣習はなくならず、依然、旧正月を正月とする家庭が多かったのですが、朴正熙(パク・ジョンヒ)大統領の時代になってからは、カレンダーから旧暦の正月の表示がなくなってしまったということです。この時代は経済発展のため生産性の向上に力を入れていたので、陽暦と旧暦が両方あるのは非効率だと考えられていたそうです。でも、それでも長い間の習慣はなくならず、旧暦でお正月を過ごす国民が少なくありませんでした。そういう状況がようやく反映されたのは、1985年、全斗煥(チョン・ドゥファン)政権になってからでした。このとき旧正月当日が「民俗の日」と制定され、休日になりました。
それからも陽暦の1月1日から3日までが連休という体制は続いていましたが、1989年1月3日が休日でなくなりました。次いで1999年には1月2日が休日でなくなり、現在のように1月1日だけが休日という暦が定着しました。
そして民俗の日と呼ばれていた旧正月は、盧泰愚(ノ・テウ)政権の1989年に「ソルナル」になり、いまでもソルナル当日とその前後1日ずつの、合わせて3連休が定着しています。
ソルナル(설날)という名称の由来にはさまざまな説がありますが、「낯설다」という言葉からきているという説が有力なようです。낯설다は、見慣れない、不慣れだ、面識がないなどという意味の韓国語で、ソルナルは、「まだ面識のない、慣れていない年」という意味になります。