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ライフスタイル

第117話 九尾狐(クミホ)の話

2010-08-30

玄海灘に立つ虹

第117話 九尾狐(クミホ)の話
8月最後の月曜日、夏の最後ということで、怖い話(?)をしましょう。九尾狐(クミホ)のお話です。
九尾狐(九尾の狐)とは、金色の毛に覆われ、9つのしっぽを持つ狐の姿をした動物です。怪談などで妖怪として頻繁に登場するせいで、夏のドラマの素材の定番になっています。これまでドラマや映画の中で描かれた九尾狐は、人間になるために人間の肝臓を必要とする妖怪で、肝臓を得るために人間を誘惑するメスがほとんどでした。でも今年ドラマに出てきた九尾狐はこうした伝統的なものとは違います。
今年放送された「九尾狐」ドラマはふたつです。まず、今年7月から8月にかけて放送された(先週終了)KBSドラマ『九尾狐-狐姉妹伝』に出てくる九尾狐は、一部伝統的なものと重なる部分もあります。朝鮮時代を舞台にしており、白い韓服をまとい、とがった歯と爪を持っています(いつでも人間に早変わりできるそう)。でもこのドラマでの九尾狐は男を誘惑するのではなく、自分の子どものためにはなんでもする「母親」としての姿が強く描かれています。母親の九尾狐は、娘が九尾狐として一人立ちできる12歳になるまで安全に育てるために、人間の姿でヤンバンの家に妾として住み込みますが、その家の娘のせいで自分の娘が犠牲になったことで、復讐に燃えます。でも自分の娘の魂がその家の娘に宿ってしまい、復讐に勝る子どもへの愛情ゆえに葛藤します。ドラマ『フルハウス』でピ(チョン・ジフン)扮するヨンジェをめぐってチウン(ソン・へギョ)と対立するヘウォンを演じたハン・ウンジョンが母親九尾狐役で主演し、演技派女優として名を揚げました。
もう一つのドラマ、SBSで放送中の『僕の彼女は九尾狐』には、これまでの観念を覆した、まったく新しい九尾狐が出てきます。おちゃめではつらつとした20代の女性の姿をした九尾狐で、時代の背景は2010年、今年です。白い服を着ていますが韓服ではなくワンピースで、名前もクミホの「ミホ」です。人間の男の子と恋に落ちるストーリーです。天真爛漫な九尾狐を『美しき日々』や『このろくでなしの愛』などで日本でも知られるシン・ミナが、偶然出会った九尾狐と恋に落ちる男の子を人気絶頂の歌手兼タレントのイ・スンギが好演しています。
九尾狐はその姿がおどろおどろしいので怪談によく出てきますが、人間になりたいという強い願いを持っているだけで、人間に害を与えるものではないとされています。ここにきてドラマに登場している九尾狐は、こうした姿をモチーフに、より人間に近く、複雑な感情を持った存在として描かれているといえます。この夏、ドラマで九尾狐が親しみのある存在になった以上、今後は夏のドラマの定番だった妖怪としての九尾狐にはあまりお目にかかれなくなるのではないかと思います。

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