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映画『シュリ』

#成川彩の優雅なソウル生活 l 2024-09-04

玄海灘に立つ虹


本日は、カン・ジェギュ監督の『シュリ』をご紹介します。韓国では1999年に公開されて、観客数600万人を超える大ヒット、日本でも観客数100万人を超え、初めて見た韓国映画は『シュリ』という人も多いですよね。今月日本でデジタルリマスター版が公開されるということで、改めて振り返ってみたいと思います。
99年といえば、『タイタニック』が世界を席巻していた頃なんですが、韓国では『シュリ』の観客数が『タイタニック』を大きく上回ったということが話題になりました。600万人を超える観客数は当時としてはぶっちぎりの過去最多で、韓国映画がハリウッドを超えたというのは、韓国では驚くべき出来事だったんですね。「韓国でもこんな映画が作れるのか」という興奮が大きかったようです。「韓国映画の歴史はシュリ以前と以後に分かれる」と言われるほど、記念碑的な映画です。
私も日本で公開された2000年にスクリーンで見ましたが、銃撃戦などすごい迫力に圧倒されました。それまで見た韓国映画がイム・グォンテク監督の『風の丘を越えて/西便制』(1993)ぐらいだったので、韓国映画のイメージが一気に変わりました。

スパイアクション映画で、主演はハン・ソッキュ、キム・ユンジン、今や韓国映画界のど真ん中にいるソン・ガンホ、チェ・ミンシクも出ていたというのもすごいですよね。でも実はこの前に、97年公開の『ナンバー・スリー NO.3』という映画にもこの3人一緒に出てました。
『シュリ』は、北の工作員による暗殺計画を南の特殊要員が食い止めようとして衝突するという内容で、ハン・ソッキュ演じるジュンウォンは南の特殊要員、キム・ユンジン演じるミョンヒョンは北の工作員で、二人は結婚を控えた恋人同士という、南北分断の悲劇が描かれた映画でした。ソン・ガンホはジュンウォンの同僚、チェ・ミンシクはミョンヒョンの上司で、久々に見ると、二人ともほっそりしててかっこいい。今とはだいぶイメージが違います。そしてこれは最近見直して気付いたことですが、ほんのちょっとだけ、ファン・ジョンミンも出てました。名優たちの新人時代を見るというのも、再公開の楽しみの一つかと思います。


「シュリ」は南北分断を背景にしたスパイアクションというだけでなく、そこにロマンスも加わったというのが、日本でのヒットの理由だった気がします。先ほど主演はハン・ソッキュ、キム・ユンジンと言いましたが、日本のポスターはこの2人が大きく出ていたのが、実は韓国ではハン・ソッキュ、チェ・ミンシク、ソン・ガンホの3人がポスターに出ていて、クレジットもキム・ユンジンより先にこの3人が出るんですね。韓国ではアクション、日本はロマンスに重きを置いたマーケティングだったのかなと思います。日韓のポスターを見比べるのもおもしろいですよね。

撮影裏話ですが、映画の後半でサッカーの試合が出てくるんですが、実はこれ撮影許可が出なくて、こっそり撮った映像だそうです。こんなに大ヒットするなら許可したらよかったのに、と思いますが、許可が出なくても撮って映画に使ったというのも、90年代だからできたのかもしれません。他にも国防部に断られて銃をアメリカから借りたとか、なかなか苦労した撮影だったようです。
タイトルの「シュリ」というのは、魚の名前で、映画の中では北の工作員部隊の作戦名として出てきます。この映画で魚はとっても重要なんですが、特にキッシングラミーという熱帯魚が、つがいのうち一匹が死ぬともう一匹も死んでしまうというのは本当かは分からないんですが、主人公2人を象徴する存在として登場しました。


カン・ジェギュ監督は2004年にチャン・ドンゴン、ウォンビン主演の朝鮮戦争を描いた映画『ブラザーフッド』で再び歴代観客動員数1位の記録を更新しました。その後も作品を作り続けていて、今日本で公開中のハ・ジョンウ、イム・シワン主演、1947年のボストンマラソンを描いた映画『ボストン1947』もカン・ジェギュ監督作です。
『シュリ』は長らく版権の問題でなかなか韓国でも見るのが難しかったんですが、問題がようやく解決したそうで、おそらく再公開の後には配信でも見られるようになるのかなと思います。ただ、スクリーンで見る機会というのは今回の再公開を逃すとなかなかないと思うので、より鮮明になった映像とサウンドをぜひ映画館で味わってもらえたらと思います。

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