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ノーベル文学賞に輝いた韓江さん

#韓国WHO‘SWHO l 2024-10-21

玄海灘に立つ虹

ノーベル文学賞に輝いた韓江さん
韓国フーズフーは、今、ニュースやインターネットで話題になっている人物、前からよく名前は聞いているけれども一体何をしている人物なのかよく分からないという人をマルコメの視線から3つのキーワードでご紹介していくコーナーです。

今回ご紹介する人は、たぶん今、世界中で注目されている作家でしょう。今年のノーベル文学賞に輝いた韓江(ハン・ガン)さんです。

1.ノーベル賞コンプレックス
ハン・ガンさんのノーベル文学賞の受賞をたぶん一番驚いているのが、韓国人ではないでしょうか。

これまでノーベル賞は韓国人にとって、何としてでも獲得したかった賞でした。
そのために政府も各種支援をしていました。
2015年朴槿恵( パク・クネ)政権では2025年までに最大8000億ウォン(およそ840億円)を投資し、世界トップレベルの「ノーベル賞級」科学者1000人を育成する計画をたてました。まさにノーベル賞をとるための政策でした。
そしてこの政策からも分かるように、ノーベル賞をとるなら科学系の賞だと思われていました。
文学賞に関してもこれまでに発表前に下馬評にあがった作家はいましたが、男性ばかりでした。詩人の高銀(コウン)さん、全10巻の大河小説「張吉山(チャンギルサン)」で有名な作家の黄晳暎(ファン・ソギョン)さんの名前が過去に上がっていましたが、二人とも80代の高齢です。

ノーベル賞のような世界的な権威ある賞を取るなら、科学者、それも男性というのが一般的な考えだったということです。そういう韓国社会の雰囲気の中で50代の女性作家、韓江(ハン・ガン)さんの受賞は韓国人にとって大きな喜びであると同時に、衝撃だったと言えます。
そのせいでしょうか、受賞の報道後に一部の政界や市民団体から批判の声があがりました。彼女の作品の背景となった光州事件や済州島4.3事件に対する解釈の差がそのような批判につながったようです。
このノーベル賞に対する微妙な感情が、まさしく韓国人のノーベル賞コンプレックスではないでしょか。

2.韓国文壇と韓江さん
10月11日の産経新聞は韓江さんに対して「韓国でも別格、現代に生きる女性の感性を丁寧に描く詩人、ノーベル文学賞の韓江さん」というタイトルの記事を掲載しています。
この韓国でも別格という表現、うなずけます。

韓国の文壇は女性作家だけ見ても第一世代として、朝鮮時代末期から日本の植民地時代、そして終戦までを描いた全20巻の大河小説「土地」の作者の朴景利(パク・キョンリ)さんなど、植民地時代、そして韓国戦争を経験した世代の「恨(はん)」を描いた作家たちがいました。

その次は、孔枝泳(コン・ジヨン)さんなど、386世代と呼ばれる民主化運動や労働運動を題材にした世代です。

 そして 「82年生まれ、キム・ジヨン」の作家チョ・ナムジュさんなどのフェミニスト小説を書いている世代が続き、最近では日本でも人気の癒し系のエッセーを書いている作家たちがいます。

しかしハンガンさんはそのどこにも含まれません。まさに別格の作家です。
また文壇とも距離を置いているようで、特にメデイアの前には普段からあまり顔を出しません。今回の受賞後も記者会見は開かないと父親で作家の韓勝源(ハン・スンウォン)さんを通して発表しました。
その後、17日にソウル市内で開かれたイベントに出席した韓江さんは、「今までそうしてきたように、書き続けながら本の中で読者たちに会いたい」と述べ静かに執筆に専念したいとしています。
また 彼女の公式ホームページを見てみますと、これまでに彼女は合計11冊の長編小説、短編集、詩集などを出していますが、そのほとんどの作品が外国語に翻訳出版されていることです。代表作の「菜食主義者」は35か国語に、光州事件を素材にした「少年が来る」は27か国語に翻訳出版されています。

このように多くの国で翻訳出版されていることが、今回のノーベル文学賞の受賞につながったのではないでしょうか。
2016年に「菜食主義者」がイギリスで最も権威ある文学賞の翻訳部門にあたる「ブッカー国際賞」を受賞しましたが、この時にその英訳の翻訳に関して国内から批判の声が出たことがありました。翻訳が違っていると、しかし韓江さんは翻訳者の翻訳を尊重しました。そういう姿勢が彼女の作品が多くの国で翻訳出版されている理由の一つなのかもしれません。

3.家族
韓江さんは小説家韓勝源さんの娘としても有名ですが、彼女をはじめ、父、兄、弟、そしてご主人も全員、文学関係の仕事についています。お父さんの韓勝源さんは韓国の芥川賞と言われる李箱文学賞の受賞者で、韓江さん自身もこの賞を2005年にとっており、親子そろって李箱文学賞を受賞したのは初めてのことでした。
また兄は小説家、童話作家、弟も小説家、漫画家をしており、夫は文学評論家です。ご主人とは離婚していたことが、今回のノーベル賞受賞後に出版社を通じて発表されました。

ご主人との間には息子さんが一人いて、今回のノーベル賞受賞の連絡を受けたときにも息子にご飯を食べさせていたという話が有名になりました。もともと結婚はしても子供は作らないつもりでいたハンガンさんですが、当時ご主人から「子供に雨音を聞かせたり、甘くて美味しいスイカを食べさせたいと思わないかい」と言われて、考えを変えたというエピソードは有名で、多くの女性たちを感動させました。

また韓江という名前は、ソウルの真ん中を流れる川と同じ音ですが本名です。
 川の方は漢字の漢に江の字ですが、彼女は韓国の韓に江です。名前としては、特に女性の名前としては個性的だと言えます。
この名前、お父さんの韓勝源さんが大きな人物になるようにということから、大きな川と同じ名前をつけたそうです。
 幼いころには「漢江、洛東江、大東江」と言われてからかわれたそうですが、今回もノーベル文学賞の受賞を「ハンガンの奇跡」というタイトルをつけた新聞もあったようです。

実は韓江さんは最後の小説をすでに執筆しています。
2019年5月、ノルウェーのアートプロジェクト「未来の図書館」に2114年に出版される未公開小説の原稿を渡しました。
未来の図書館は2014年から100年間、毎年1人の作家の未公開作品を受け取り、2114年に100編を紙書籍で出版するプロジェクトです。
この未発表作品のタイトルは『愛する息子へ(Dear Son, My Beloved)』だそうです。どんな内容なのでしょうか。

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