ムルフェ(물회)とは、スライスしたお刺身と野菜に、味付けした冷たいスープを入れた料理です。ムル(물)は水、フェ(회)は刺し身の意味で、直訳すると「水刺身」となります。
年中食べられていますが、冷たいムルフェはやはり暑いときに人気があります。
スープは粉唐辛子で色付けされていて赤いのですが、そう辛くはなく甘酸っぱい味がします。スープには氷が入っていることもありますが、シャーベット状になっているところも多く、食べているうちにだんだん溶けていき、スープを飲めるようになります。
そのスープに茹でたそうめんを入れたりご飯を入れてシメとしていただきます。
せっかくの新鮮なお刺身をなぜそのままではなく水を入れて食べるのか分からないという人もいると思います。ムルフェはもともと漁師の人たちが漁船で食べていたもので、「漁師たちのファストフード」と呼ばれています。手っ取り早く食事を済ませたい、あるいは小さすぎるなどの理由で売り物にならないお魚を適当にスライスし甘辛味噌のコチュジャンと混ぜ、そこに水を入れてかっ込んでいたのがムルフェの始まりになったといいます。ですからムルフェに使われるお魚は多種多様だったのですが、いま食堂で食べられるムルフェはどちらかというとあっさりした白身のお魚が多く使われるようになっています。
ムルフェが有名なのは韓国の東の海岸で、江原(カンウォン)道の束草(ソクチョ)や慶尚(キョンサン)北道の浦項(ポハン)などですが、どちらもヒラメやヤリイカ、クロソイ、ナマコなどが入っていて、手長だこやアワビなどの高級食材が入っているところも。この二つの地域を中心にムルフェ専門店もありますが、刺身料理店ではムルフェを出しているところも多く、もちろんソウルでも食べられます。お店によってお刺身や野菜の種類、スープの味が少しずつ違います。新鮮な海産物がどれだけ入っているかが、ムルフェの味を左右する要因の一つです。
ではサラメシでは生のお魚が使われているのか、というと、やはりというか残念ながらそうではありません。サラメシのムルフェには茹でたイカが使われています。それに千切りキャベツやにんじん、きゅうり、細かくちぎったサニーレタスなどが添えられています。シメのそうめんが最初から入っていますが、ちゃんとご飯も付いているので好みによってスープにご飯を入れて食べることもできるようになっています。他には豚のコチュジャン炒めやキュウリのピクルス、白菜キムチなどがサブメニューとして出ました。
機会があればぜひ一度ご賞味ください。