境界を乗り越えたアーティスト
白南準(ぺク・ナムジュン)、通称ナム・ジュン・パイクは音楽と美術などジャンルを行き来しながら活動した実験芸術家である。1960年、フルクサスグループで活動していた彼は既存の芸術の権威に挑むようなパフォーマンスを披露した。ピアノをぶち壊し、客席にいた知人のネクタイをハサミで切る奇怪な行為は、観客を芸術の中に引き込むためのパフォーマンスだった。テレビアートの開拓者と評価される彼は、テレビを素材にした数々の作品を披露した。「テレビ仏陀」、「マグネットテレビ」、「月はもっとも古いテレビ」などの作品には白南準の哲学的なメッセージが込められていた。
白南準の「ピアノフォルテのためのエチュード」
ⓒ KBS
(左) 白南準「マグネット・テレビ」、(右) 「テレビ仏陀」
ⓒ KBS「グッドモーニング・ミスター・オーウェル」で世界とコミュニケーションする
1984年1月1日、白南準(ぺク・ナムジュン)は衛星放送を使って4つの国を結んだ世界初のリアル・タイム双方向通信プロジェクトを実行に移した。ジョージ・オーウェルのSF小説「1984年」に描写されたメディアによるディストピア的な未来ではなく、メディアを通じた交流とコミュニケーションの可能性を提示したこの作品には、音楽家のジョン・ケージ、画家のヨーゼフ・ボイスなど世界的なアーティストが参加し、2,500万人が視聴した。このプロジェクトはメディア技術が芸術と社会を結ぶ道具になり得ることを証明した象徴的な事件だった。
「グッドモーニング・ミスター・オーウェル」(1984)
ⓒ KBSヴェネツィア・ビエンナーレで金獅子賞を受賞する
1993年、白南準(ぺク・ナムジュン)はドイツ館代表の一員としてヴェネツィア・ビエンナーレに参加し、「エレクトロニック・スーパーハイウェイ」という概念を通じて未来のインターネット社会を予見した。テレビを載せた自転車、伝説上の古朝鮮の王である檀君(タングン)とジンギスカンなど象徴的な人物を通じて東洋と西洋の連結を表し、この展示で最高賞の金獅子賞を受賞した。その後、彼はドイツで最高の芸術家に対する敬称であるマイスターと呼ばれるようになり、現代美術を代表するアーティストと評価された。
ヴェネツィア・ビエンナーレ「金獅子賞」受賞 (1993)
ⓒ KBS白南準(ぺク・ナムジュン)の遺産
脳硬塞で倒れ、車いすに頼るようになっても白南準(ぺク・ナムジュン)は回顧展とパフォーマンスを通じた創作活動をあきらめなかった。彼は芸術と技術、東洋と西洋の境界を越えて活動したビデオアートの開拓者であり、融合芸術の先駆者として、今なお世界のアーティストの大きな影響を及ぼしている。
(左) 最後まで創作活動をあきらめなかった白南準、(右) 「ヤコブの梯子」
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