このニュースは日本でも大きく報道されたので、お聞きになったリスナーも
多いのではないでしょうか。
長野県の中央アルプスで29日、登山に来ていた韓国人登山者20人のグループの一部と連絡が取れなくなり、30日朝になって、登山者とみられる男性3人に続いて、行方不明だったもう一人も30日午後、渓谷から転落して死亡しているのがみつかりました。
韓国も登山ブームだという話はこの時間にもしてきましたが、それに加えて最近は海外への登山ブームだと言えます。去年の海外旅行客数が1300万人、その中の20%
にあたる270万人が海外での登山やトレッキング客だったといいます。
そしてその行き先はといいますと、日本と中国が近いことから人気で、その次に
ヒマラヤが続きます。
日本では富士山、そして今回遭難した中央アルプスや、温泉もできるということから九州の山にもたくさんの韓国人登山客が行っています。
韓国も日本と同じように、山の多い国です。かつ比較的、都市から近いところに山があります。そのため1ヶ月に2度以上山に出かけるという人口が1800万人に達するといいます。ものすごい数字です。
そしてこの人たちが、もう国内の山には飽きたので海外にと目を向け始めたのです。
でもそこには登山に対する大きな認識の違いがあるような気がします。
NHKのニュースで、韓国の登山事情に詳しい人の話としてこんなことを報道していました。
韓国には日本のような標高の高い山が少なく、登山は標高1000メートル程度の日帰り登山が一般的だということです。また訪れた登山者の中には、早朝ではなく午後から出発して、日没に到着する時間配分で登山を進めたり、グループで山に入っても一緒に行動せず、それぞれのペースで登ったりするなど、日本の登山の習慣とは異なる行動をとる人もいるということです。3000メートル級の山の環境の厳しさが、訪れる韓国人登山者にきちんと伝わっていないのではないかと指摘しています。
私もこのような違いは感じていました。旅行会社のパンフレットを見ても日本の南アルプス、北アルプス、そして今回の中央アルプスの山へのツアーが韓国国内の山に行くような感覚で紹介されています。日本ではこれらの山へ登山する人はきちんとガイドを連れて、装備もきちんと整え、かつ低い山である程度技術を身につけた所謂、上級者コースの人が行く山だという印象があります。そして本格的な登山というのはそういうものだという印象もあります。しかし韓国人にとって山登りは一番高い済州島のハンラ山でも標高は1950m、日帰りできる山なのです。ちなみに今回遭難したグループの方々は韓国国内の山にはほとんど登ったという熟練者だったということです。
また韓国人の登山に対する姿勢にも問題があるとの指摘もあります。KBSでは
こんな風に報道していました
登山はヒーリング、癒しのためのものではなく、チャレンジ、行き過ぎた挑戦的な姿勢が問題です。そのため自然を楽しみ余裕をもって登山するのではなく、ぎりぎりのスケジュールで出かけます。ヒマラヤトレッキングの場合も、通常は8泊9日の日程を韓国人登山客は6泊7日でこなしてきます。
今回の事故でも止まった山小屋のご主人は天候が悪いので登山は中止するようにと勧めましたが、一行はそのアドバイスを無視して登山を決行しました。
さらに山での事故の4人に1人は高齢者の事故だという資料もあります。日本もそうですが、韓国でも高齢者の山登りが盛んです。韓国のお父さん、おじいちゃんたちは朝早く山に登り、お昼くらいにはもう下山してきて山のふもとで酒盛りをするというパターンの山登りが多数を占めています。
そういう感覚で日本の山にも出かけて行くのです。今回事故にあったグループも40,50代の人々は無事に下山しましたが、最高齢者の78歳の方が亡くなっています。 高齢者だからいけないという話ではありません。日本の三浦雄一郎さんは80歳でエベレストに登っています。問題は準備不足と山に対する認識の甘さです。
最後に今回事故にあったグループの1人は報道陣のインタビューに対して、
山の中に登山小屋や頂上への標識がなく、それがあれば無理はしなかったと言っていました。また言葉が通じないことも、情報不足の原因になったようです。
これからますます日本の山の上で、韓国人登山客の姿を見かけることも多くなると思います。現地の関係者の皆さん、できれば韓国語での情報もぜひ今後は作ってください。お願いします。