13日の日曜日に、ソウルや釜山、 大邱、大田、光州などの主要都市だけでなく、米国のニューヨーク、ロサンゼルス、カナダのトロントなど、国内外、合計84カ所で実施された試験がありました。SSAT、サムスン職務能力試験です。
要するに、サムスングループの入社試験です。この試験には10万3000人が志願し、そのうち大学の成績や英語の資格試験の成績などの条件不備で落ちた人を除いた 9万2000人がこの日、受験しました。サムスンはこの中から5000人を選抜します。
受験者の数、そして会場の多さなど、まさに来月行われる大学修学能力試験に劣らない規模だと言えます。そして試験場の雰囲気もまさに、大学修学能力試験に負けずとも劣らない物々しさでした。
試験監督はサムスングループの役職員1万人、会場の警備と問題の輸送は系列会社の警備会社があたり、遅刻しそうな受験生はオートバイに飛び乗り到着、会場の外にはこんなプラカードがたくさんかかっていました。
他人と同じように解いていては合格できない SSAT合格者向けの面接準備班
予備校の宣伝文句です。韓国では就職試験用の予備校、問題集も数多く出版されています。書店に行けばサムスン、現代自動車、LGなど財閥グループ企業ごとの就職試験対策用の参考書や問題集が300種類以上も販売されています。特にその中でもこの SSAT、サムスン職務能力試験の問題集は63種類と最も多くの種類が発売されており、値段も平均2万1240ウォンと最も高くなっています。
ではこのように SSATに多くの応募者が集まる理由はなんでしょう。もちろん世界的な企業であるサムスングループに入りたいということではありますが、それ以外にも理由があります。新聞によりますと
今年に入ってSSATの応募者が急激に増加した理由は、サムスングループが昨年下半期の採用から書類審査を廃止し、希望すれば誰でも試験を受けられるようにしたからだ。これは書類選考によって応募者の多くをふるい落とし、一部にのみ入社試験を受けさせる他の大手企業の採用方式とはかなり異なる。そのため就職に比較的不利とされる地方大学出身者はこのSSATに望みを掛け、サムスンに集まり始めたのだ
しかしいくらなんでも一企業の入社試験に10万人が応募するというのは、やはり異常な気がします。サムスンの関係者もそう考えています。サムスングループ未来戦略室の関係者は
「優秀な人材がサムスンに来るのは嬉しいことだが、10万人以上の人員が1企業に志願するような現実は、サムスン職員さえ恐ろしいと感じるほど」
だといっています。またこの入社試験にかかる費用も無視できません。受験生が平均2冊の受験書を買って一部は予備校の講義まで聞くという点を勘案すれば、受験対策市場だけで100億ウォンを超えるというのが業界の推算です。それに問題用紙を作って運送し試験を監督するのにサムスンが負担する費用も25億ウォン。試験を受けるために上京するケースなどを含めればSSATを受けるために必要な社会的費用は数百億ウォンに達します。
そのためこのような公開採用を廃止してアメリカのように随時採用を導入すべきと言う声も出ています。しかしそれに対してある就職ポータルサイトの関係者は
「大韓民国の社会で、しかもサムスンが公開採用を廃止して随時採用だけをするといえば、結果の公正性に対して疑問を提起する人が多い」「少ない人員を採用する時はインターンシップ等を通して長期間そばで見守って一緒に仕事をするのが正確な評価方式かもしれないが、サムスンのように年に1万人ほど採用するには客観的な試験が最も公正にならざるをえない」
と言っています。ちなみにこの試験、言語、数理、 時事常識、状況判断力などの分野から185問の問題が出題され、130分間でこれを解かなくてはなりません。
財閥のグループ企業が大勢を占めている韓国社会、サムスンのこの試験も、では合格したからといって希望したサムスン電子にいけるかどうかはまた別の問題です。若者たち、希望を失わずにがんばれと、言えそうもない韓国の就職事情です。