セウォル号事故の直後、朴槿恵大統領が行方をくらませていた「空白の7時間」がたびたび関心を集めています。その7時間の間に何が行われていたのかは定かではありませんが、「クッ」をしていたという情報が一説としてささやかれています。
韓半島では古代から韓半島独自のシャーマニズムが根付いており、そのシャーマニズムにおける祈祷師を「ムダン」、ムダンによって執り行われる祭祀を「クッ」と呼んでいます。ムダンは司祭、呪医、預言者としてあがめられ、神と人間をつなぐ役割をすると考えられてきました。先祖から世襲したムダンもいれば、自らの身体に神が降りてきたことでその道に入ったとするムダンもいます。また、クッは、地方や目的によってさまざまなやり方がありますが、音楽が演奏されるなかムダンが踊るような格好をして祈祷するというのが一般的です。依頼者の家やムダンの祭壇で行うこともありますが、現在では専用の祠堂を利用することが多いようです。普段からシャーマニズムを信仰としていなくても、病気やトラブル続きのため厄払いのような意味でクッをしてもらったり、幸運を呼び込む目的でクッをしてもらったりと、様々なきっかけでムダンの世話になる人が多くいます。ただし、西洋発祥の宗教を信じる人たちなどの間では批判的な見方もされています。
一方、地方によっては、クッを伝統行事として執り行っているケースも多く見られます。代表的なのは、江原道江陵市の江陵端午祭。全体的には「山で神様を迎えて人里までお連れし、人里での滞在の後再び山にお見送りする」という流れになっています。これらを旧暦4月5日から5月7日までさまざまな行事で行いますが、メイン行事の一部にクッも組み込まれています。これは、2005年、ユネスコ世界文化遺産に登録されました。
このように韓国の一部の人々には大変親しまれているクッですが、個人的に依頼するとなるとムダンから高額の報酬を請求されてしまう例もあるため、「インチキ」と考える人も多いのが現実です。そのため、今回のように大統領が「クッ」をしていて公務がおろそかになっていたのではないかという疑惑が浮かび上がると、「嘆かわしい」と感じる人も多いのでしょう。