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 昨年、韓国内外の映画祭で多数受賞して話題になったキム・ボラ監督の「はちどり」。韓国では、去年8月に公開された。34冠?日本でも4月公開予定。

1994年が背景。主人公ウニは女子中学生。キム・ボラ監督自身が1994年に中学生だった。自身の体験もかなり反映されている。


 映画を見ていて、最初は、雰囲気からなんとなくちょっと昔の話かなと思っていたら、テレビで94年のサッカーワールドカップ・アメリカ大会が放送されるのを見て、ああ、94年かと分かる。私にとっても94年は特別の年だった。家族旅行で初めて韓国を訪れた年。小学校6年生だった。はっきり覚えているのは、滞在中に北朝鮮の金日成主席が亡くなったこと。新聞の大きな見出しを見てなんかすごいことらしい、ぐらいに思っていた。映画の中にもそのニュースが出てくる。


 一方、映画の核心となっている94年の出来事は、ソンス大橋の事故。94年10月21日に実際に起きた事故。映画の大半はウニの恋愛や友達とのけんか、家族との葛藤など日常が描かれていて、事故は終盤に出てくる。この事故がウニに与えた衝撃と、それがウニにもたらした変化が印象的だった。


 事故のことは、私も覚えている。日本でも大々的に報じられた。橋の一部が漢江に崩れ落ちて、32人が死亡する大きな事故だった。橋が川に落ちるなんて想像したことがなかったのでそのニュース映像が衝撃だった。その大事故を映画では、もっと個人的な視点で、描いている。

共感した部分でいえば、私も両親の仲が悪い時期があって、ちょうど中学生の頃だった。家が居心地が悪くて、学校にいる方が楽しかった頃。映画でも、ウニは手術で入院している時に、家よりも病院が居心地がいいと言っていた。当時を思い出して切ない気持ちになった。


 両親がけんかしたり、兄から暴力を受けたり、家族との関係に悩むウニにとって、漢文の塾の先生が救いになる。ヨンジという女性の先生で、ウニを子ども扱いすることなく、話し相手になってくれる。ヨンジ先生からウニへの手紙の言葉「나쁜 일들이 닥치면서도 기쁜 일들이 함께한다는 것. 우리는 늘 누군가를 만나 뭔가를 나눈다는 것. 세상은 참 신기하고 아름답다.(悪いことが起こっても、それと共にうれしいことも起こる。私たちはいつも誰かに会って何かを分かち合う。世界はとっても不思議で美しい。)」がとっても響いた。悲惨な事故だったけども、そこからウニが少し成長して、世界を見る目が変わる、そのきっかけになる言葉。


カットも一つ一つ丁寧で、多数受賞も納得の素晴らしい作品。独立映画でここまで注目されるのは非常に珍しい。映画祭ではたくさんの独立映画を見る機会があって、いい作品も多いが、劇場公開に至ることが少ないのが残念。


もう一つ注目したいのは、女性監督、女性主演という点。ここ1、2年の間に女性監督の活躍が目立つようになったが、やはり女性監督が作る映画の主人公は女性が多い。男性の反感を買いそうで言いにくい部分もあるが、特に家庭内での男女の描き方の繊細さが女性監督ならではだなと思った。女性監督、女性主演の映画が増えてきたことも、独立映画が注目を浴びることも、映画の多様性という意味でとってもいいことだと思う。

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