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文化

金承鈺(キム・スンオク)の短編小説「霧津(ムジン)紀行」

2018-11-20

金承鈺(キム・スンオク)の短編小説「霧津(ムジン)紀行」

バスが山すその角を曲がる時、

私は「霧津(ムジン)まで10キロ」と書かれた案内板を見た。

それは昔と同じく、

道端の草むらから突き出していた。


버스가 산모퉁이를 돌아갈 때

나는 무진 '10km'라는 이정표를 보았다.

그것은 옛날과 똑같은 모습으로

길가의 잡초속에서 튀어나와 있었다.



#インタビュー:ソウル大学インタビュー:国語国文学科 パン・ミノ教授

「霧津(ムジン)紀行」は、1964年、文芸誌「思想界」を通じて発表された作品です。その人公「私」は30代の男性です。彼は数年前、ある未亡人と結婚し、その影響力で製薬会社の常務になり、専務への昇進を狙っています。現実と妥協することで、安定した地位と生活を手に入れることができたのです。しかし、主人公はある種の喪失感を抱いています。安定した生活の代償として青春の純粋さや美しさを失ってしまったと感じながら生きているのです。そんな苦しさに苛まれる人物の内面の世界、何を夢見ていたかすら忘れ、若くして年老いてしまったように生きる人物を主人公とする小説「霧津(ムジン)紀行」は情熱ではなく、憂鬱さと冷静さを描き出した作品と言えます。



霧津(ムジン)に名産物がないわけではない。

私はそれが何か知っている。

それは霧だ。

 

日が昇り、

風が海の方から向きを変えて吹いてくるまで、

人の力ではそれを追い払うことができなかった。

霧、霧津の霧、霧津の朝に人々が出会う霧。

人々をして太陽を、風を切に呼ばせる霧。

それこそ霧津の名産物なのだ。


무진엔 명산물이 없는 게 아니다.

나는 그것이 무엇인지 알고 있다.

그것은 안개다.


해가 떠오르고, 

바람이 바다 쪽에서 방향을 바꾸어 불어오기 전에는

사람들의 힘으로써는 그것을 헤쳐버릴 수가 없었다.

안개, 무진의 안개, 무진의 아침에 사람들이 만나는 안개.

사람들로 하여금 해를, 바람을 간절히 부르게 하는 안개,

그것이 무진의 명산물이 아닐 수 있을까!



霧雨が降る翌朝、母親のお墓参りに行った主人公。

お墓の周りに生えた草を抜きながら、

ふと今頃自分を専務に昇進させるため

走り回っているであろう舅の姿を思い浮かべ、

自分も墓の中に入ってしまいたいと思います。

その朝、堤防の上を歩いていた主人公は、自殺した女性が発見された事件現場を目撃します



私はふと、昨晩私が寝付けなかったのは、

この女性の臨終に立ち会うためではなかっただろうか、と思った。

通行禁止の解除を告げるサイレンが鳴り、

この女性は薬を飲みこみ、

ようやく私はそっと眠りに落ちたような気がする。


나는 문득, 내가 간밤에 잠을 이루지 못하고 뒤척거리고 있었던 게

 이 여자의 임종을 지켜주기 위해서가 아니었을까 하는 생각이 들었다.

 통금해제의 싸이렌이 불고 이 여자는 약을 먹고

 그제야 나는 슬며시 잠이 들었던 것만 같다.




作家:金承鈺(キム・スンオク)(1941.12.23.~、日本大阪生まれ)

1962年 短編小説「生命練習」が「韓国日報」の新春文芸に当選、文壇にデビュー

2014年 銀冠文化勲章受賞など

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