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文化

エッセイ「私は私のままで生きることにした」

#成川彩の優雅なソウル生活 l 2020-04-17

玄海灘に立つ虹

〇 今日紹介するキム・スヒョンの「私は私のままで生きることにした(나는 나로 살기로 했다)」は日本で売れている韓国のエッセイということで知った。去年の7月の時点で日本で発売3ヶ月で15万部売れたという記事があったので、今はもっと売れていると思う。


〇 もちろん韓国でも人気のエッセイで、出たのはちょっと前。2016年。日本で売れた理由の一つは、BTS(防弾少年団)のジョングクの影響もあるらしい。愛読書なのかは分からないが、この本と一緒に写っている写真がファンたちの間で話題になった。やはりBTSの影響力はすごい。


〇 BTSファンでなくとも、タイトルを見て手に取った人も多いのでは。他人の目を気にせず自分らしく生きる、というのは憧れるけども、なかなか難しいこと。特に日本や韓国では難しい。著者は、「私たちは自身の感情を尊重することより、他人の考えや感情にもっと注意を傾けるように教育を受けた」と書いていて、日本も韓国も同じだなと思った。英語には韓国語の눈치にあたる単語がない、とも指摘している。日本語でもぴったり合う訳語は思い浮かばないが、눈치를 보다は空気を読む、という感じ。日本でも空気を読むことは大事とされる。


〇 この本は、いかに空気を読まずに、自分に集中するのか、ということをいろんな角度から述べたエッセイ。「欲求を抑え込んできた人は、何が好きなのか、何をしたいのか、自分の感覚を失ってしまう」とも書いている。日本以上に韓国の行き過ぎた教育熱は、心配になることがある。小学生の頃から夜遅くまで塾に通って、親が求める人生を歩んでいるのを見ると、どこかで壁にぶつかった時に、自分で自分がどうしたいのかを考える力は育っているのかな、と。塾で勉強するのが悪いことではないが、子ども本人の選択がどのくらい尊重されているのか気になる。


〇 本のイラストも、著者のキム・スヒョンさんが描いていて、ゆるい感じで、イラストに添えられてる言葉がいい。例えば、お母さんが子どもに向かって、「大きくなったら何になりたい?」と聞き、子どもは困った顔で「他に質問ないですか?」と返す。その下には、「私たちは、自分以外の何になる必要もない」とある。この本の核心のメッセージ。自分は自分。何かになる必要はない。大事なのは、何がしたいか?なのに、日本でも韓国でも、小さい頃から、ずっと聞かれる質問は「何になりたい?」。


〇 私自身も、新聞社を辞めて韓国へ映画を学びに留学してから、周りから「それで何になりたいの?」と聞かれる。別に教授になりたいわけでもなく、私はそもそも韓国で映画を学びたかった。今、やりたいことをやっているのに、繰り返し何になりたいのかを聞かれても困る。せめて映画を学んで何がしたいの?という質問なら、韓国映画を日本へ紹介したい、記事を書いたり、こうやってラジオでお話をしたり、と答えられる。


〇 知らず知らずのうちにステレオタイプにはまっていく怖さもある。例えば、잘산다という韓国語。直訳したら、良く生きる、なのに、実際は金持ちという意味で使われる。ということも指摘されていて、そういえばと思った。良く生きる基準が経済的なことであれば、確かに、私のようなこの歳で新聞社をやめて留学するような人は良く生きてない人。自分らしく生きにくい原因は何なのか、ということがこの本を通して分かってくる。特にこれから社会に出るような高校生、大学生におすすめしたい本。

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