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文化

イ・ソンギュン×ホン・サンス監督

#成川彩の優雅なソウル生活 l 2024-03-07

玄海灘に立つ虹

ⓒ HODU&U ENTERTAINMENT, YONHAP News
〇本日は、ホン・サンス監督作の中で、イ・ソンギュンさんの出演する作品をご紹介しようと思います。皆さんご存じと思いますが、昨年末、違法薬物使用の疑いで警察の取り調べを受けていた 俳優イ・ソンギュンさんが自殺しました。ポン・ジュノ監督をはじめ映画関係者が警察の情報管理など真相究明を求めていますが、個人的にも大好きな俳優だったので、とても残念です。パッと思いつく代表作といえば映画では『パラサイト』や『最後まで行く』、ドラマでは『私のおじさん』などですが、ホン・サンス監督の作品にもけっこう出ていて、短編1本を含めて5本出ています。特に私が好きなのは『ソニはご機嫌ななめ』(2013)『へウォンの恋愛日記』(2013)なんですが、他に『アバンチュールはパリで』(2008)『教授とわたし、そして映画』(2010)、日本、韓国、フィリピンの監督によるオムニバス『ある訪問』(2009)これが短編で、私はこの短編以外は見ました。


〇出演作を挙げていて気付いたんですが、チョン・ユミとの共演が多いんですね。『ソニはご機嫌ななめ』『教授とわたし、そして映画』『ある訪問』の3本で、そういえば去年カンヌ国際映画祭で上映されて、韓国では9月に公開された『眠り』もイ・ソンギュン、チュン・ユミ主演でした。相当相性がいいんだなと思います。
ホン・サンス監督作に登場する男性は基本はマッチョな男性はあまり出てこなくて、ちょっと情けない感じなのですが、それがまたイ・ソンギュンがよくはまるんですね。『ソニはご機嫌ななめ』は、チョン・ユミ演じる大学生のソニと、3人の男性の話でしたが、その3人のうちの1人、ソニの元カレの役をイ・ソンギュンが演じていました。このほかキム・サンジュン演じる大学教授、チョン・ジェヨン演じる映画監督、みんながソニに気があって、ソニも気があるような言動で、ややこしい四角関係なんですが、どろどろした感じでなく、観客としてはあははって笑っちゃうような映画でした。
どういう部分で ドロドロっぽい四角関係を 笑えるものにしているのか、もう少し詳しく教えてください。(おもしろそう・・・)

〇個人的に忘れられないのが、この『ソニはご機嫌ななめ』と『へウォンの恋愛日記』が日本では同時期に公開されて、この2作品の試写用DVDを宣伝の人からもらった時に「ホン・サンスで、ホッと一息^^」ってメモがあったんです。親しい人だったんですけど、私が当時新聞記者でものすごく忙しくしていたので、「記事に書かなくてもいいから、これ見て気分転換して」ということだったんですが、見て、ほんとに、いい気分転換になりました。
『ソニはご機嫌ななめ』に限らないんですが、ホン・サンス監督作は、登場人物の会話をのぞき見ているような気分になります。実際、こういう恥ずかしい会話、やってるよなあってニヤニヤしながら見てしまいます。
イ・ソンギュンさんの行動で“ホッと一息”できるようなことはありましたか?

〇ホン・サンス監督は本当に多作で、毎年、それも1本でなく2本作ってる年も多く、1996年に『豚が井戸に落ちた日』でデビューして、30本を超える作品を生み出しています。しかも多くの作品が海外の映画祭で受賞していて、受賞数で言えば韓国の監督の中で圧倒的に多いだろうと思います。『ソニはご機嫌ななめ』もロカルノ国際映画祭監督賞受賞作です。


〇『へウォンの恋愛日記』ではイ・ソンギュンは大学教授ソンジュンの役で、チョン・ウンチェ演じる大学生のへウォンと別れようとしてなかなか別れられない関係です。ソンジュンは既婚者でちゃんと別れないとという思いもあるけど、へウォンに会うと心は揺れる。これもやっぱり本人たちは深刻そうなんですが、見ている分にはなんかおかしい。最後まで見て、あれ? これは日記の中の話だったのか、へウォンの夢の中の話だったのか? と戸惑うのは、へウォンは日記を書きながら居眠りしていたんですね。ホン・サンス監督作はこういう「え!?」と驚かされることがよくあって、それが海外でも高く評価されているポイントなんだろうと思います。
この映画についてのイ・ソンギュンのトークをユーチューブで見たことがあるんですけど、野外ロケが多く、陽が落ちてくるのでかなり短い時間で撮らないといけないシーンがあったそうで、そんな状況で泣いたりわめいたり、感情を作るのが大変だったそうです。でも、見ていて全然そんなことは感じさせない、本当に悲しみ、怒っているように見える、改めて、素晴らしい俳優だったなと思います。
イ・ソンギュンさんの歳を重ねていく姿が見られなくなったのはとても惜しいですが、追悼の意を込めて、今回、ご紹介しました。機会があれば、ぜひ見てみてください。

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