ソウル大学獣医学科の黄禹錫教授(52)の研究チームが、治療が難しい患者の体細胞を使ってクローン胚をつくり、それをもとにあらゆる組織の細胞になりうる胚性幹細胞、ES細胞を作ることに成功しました。このES細胞で、糖尿病や脊髄損傷など、様々な患者が必要とする体の組織を作ることができることから、けがや病気を自分の細胞を使って治す時代に一歩近づくことになり、世界の注目を集めています。ソウル大学獣医学科の黄禹錫教授の研究チームとアメリカのビッツバーク大学の研究チームは、ボランティアの女性18人が提供した卵子185個から核を取り除き、代わりに骨髄損傷や若年性糖尿病などの患者11人の皮膚細胞から採った核を移植してクローン胚を作り、31個のクローン胚が子宮に着床できる段階にまで育って、そこからES細胞11株を取り出すことに成功したと、韓国時間で20日発表しました。この研究チームは去年2月、世界で初めてヒトのクローン胚からES細胞作りに世界で初めて成功しましたが、その時は同じ1人の女性が卵子と核の双方を提供し、しかも242個の卵子からできたES細胞は1株だけでした。しかし今回は実際の患者の体細胞を使った上で、ES細胞作製効率を10倍以上高めることができました。研究チームは今後、安全性などを調べることにしていますが、この技術を使えば、難病や大けがなどの治療が画期的に進むことが見込まれています。この研究成果は19日付けのアメリカの科学雑誌「サイエンス」のインターネット版に掲載されましたが、出張先のロンドンで記者会見した黄禹錫教授は、「20年後になってようやく完成するとされていた免疫拒否反応のないES細胞を現段階で、しかも韓国人が作ったということに誇りを感じています」と話しています。