脱北したあとソウル市職員となった男性による北韓スパイ事件の裁判で、検察が提出した中国当局の出入国管理記録が捏造された疑惑が浮上し、捏造に関与した疑いのある男性が自殺をはかったことなどから、検察は、これまでの調査チームを捜査チームに切り替えて捜査に乗り出しました。
この裁判は、2004年に北韓を逃れて韓国入りし、2011年にソウル市公務員に採用された脱北男性(33)が、北韓に脱北者情報を提供したとして、2013年2月、スパイ容疑で起訴されたもので、8月の1審では、無罪になっていました。
これに対して、検察側は、判決を不服として控訴し、男性が北韓で工作員教育を受けた証拠として、国家情報院が入手したとされる中国当局の出入国管理記録を新たな証拠として提出していました。
ところが、先月13日になって、在韓中国大使館がこの出入国記録について、「捏造」であると指摘し、捏造に関与した疑いのある中国国籍の脱北者男性が、検察の任意の取り調べを受けた直後の5日に、経緯などを記した遺書を4通残して自殺を図り、現在ソウル市内の病院で手当をうけています。
この男性が残した遺書には、捏造は国家情報院の指示によるもので、1600万ウォン、およそ150万円の報酬をもらうことになっていたなどを記していたことが分り、検察では、7日、これまでの調査チームを捜査チームに切り替えて捜査に乗り出し、今後、自殺を図った男性の回復をまって事情を聴くなど、詳しく調べることにしています。