旅客船の沈没事故をめぐる報道姿勢をめぐって、混乱が続く韓国KBSでは、28日に開かれた理事会で、吉桓永(キル・ファンヨン)社長の解任決議案について、9時間におよぶ激論の末、表決を、地方選挙後の来月5日に延期することで合意しました。
社長の退任を求めてきたKBSの2つの労働組合は、すでに組合員による投票でストライキ権を確立していて、29日午前 5時から無期限の全面ストライキに入りました。
旅客船の沈没事故の報道をめぐって、KBSでは、吉桓永社長が大統領府青瓦台からの圧力でたびたび報道内容に介入したとの疑惑が浮上し、 幹部職員300人あまりが社長の退任を求めて役職からの辞意を表明したほか、報道記者らが19日午後から番組制作を拒否していて、報道番組が縮小されるなどの混乱が続いています。
こうしたなかで、KBSの理事会では、野党側推薦の理事4人がもはや社長として正常な役目を務めることは困難になっているとして、吉桓永社長の解任決議案を提案し、28日の理事会で表決を行うことにしていました。
28日の理事会は、与党側推薦の理事7人と野党側4人の11人全員が参加して、およそ9時間にわたって議論しましたが、野党側理事が速やかな表決を主張したのに対し、与党側の理事らは、解任案の記述内容の一部を修正するよう要求したほか、表決を保留するよう強く求め、結局、表決を、地方選挙後の来月5日に延期することで合意したということです。
社長の解任決議案が否決されたことで、 27日までにストライキ権を確立している2つの労働組合は、29日午前 5時から無期限の全面ストライキに入り、統一地方選挙が近づく中、選挙取材や選挙関連報道など、番組制作全体にさらに大きな影響が出ることが懸念されています。
KBSでは、李明博前大統領就任直後、前の政権が任命した当時の社長の解任に反発するとともに、公正な報道姿勢を求める記者とディレクターが中心となって2010年に新たな組合(およそ1500人)が発足し、現在は、技術系の組合(およそ2500人)とあわせて2つの組合があり、2つの組合が同時にストライキに入るのは初めてのことです。