旅客船セウォル号の沈没事故で乗客を救助せずに脱出したとして殺人罪などに問われている船長らに対する裁判で、乗組員が退船命令を出していれば、10分で全員が脱出できたとするシミュレーションの分析結果が検察側から提出され注目を集めています。
この裁判は、セウォル号の沈没事故で乗客の救助活動をしないまま脱出したイ・ジュンソク船長ら乗組員4人が殺人罪で起訴され、11人の乗組員も遺棄致死や水難救護法違反などの罪に問われているものです。
24日に光州(クァンジュ)地方裁判所で開かれた裁判で、検察側の証人として出廷した専門家は、「セウォル号沈没当時の仮想のシナリオにもとづく乗客の避難経路および所要時間について」とする報告書を提出しました。
それによりますと、乗客・乗員476人全員が海上に脱出するまでの時間は、事故が発生して船体が左側に30度ほど傾いた午前8時50分ごろのシミュレーションでは5分5秒かかり、50度ほど傾いて近くの船がセウォル号に脱出を呼びかけた午前9時25分ごろでは9分28秒、60度ほど傾いて1等航海士が脱出した9時45分ごろのシミュレーションでは6分17秒かかったとしています。
全員が脱出するまでの時間が、傾きが大きかった9時45分ごろの方が9時25分ごろより短かったのは、船の4階に多くの乗客がいて海上に飛び降りやすくなったためと説明しています。
このシミュレーションは、熟練した乗組員が避難を誘導して乗客がきちんと従った場合を想定したものですが、事故が発生してから1時間以内に退船命令が出ていれば、わずか10分で全員が脱出できたことになり、無念さが深まっています。