イギリス駐在の北韓の外交官が家族と共に韓国に亡命したことについて、北韓の体制を支えてきた北韓のエリート層でさえも金正恩体制に対する不満を感じるほど、現在、北韓内で亀裂が広がっているという分析が出ています。
最近、韓国に亡命したイギリス駐在の北韓大使館のテ・ヨンホ公使は、ヨーロッパの情勢に詳しいベテラン外交官です。テ公使が脱北を決心した理由については、ことし3月の国連安保理の北韓制裁決議の採択後始まった北韓制裁により北韓の孤立が激化したことで、国際社会で北韓の立場を代弁しなければならない外交官として限界を感じたためではないかとみられています。
統一部によりますと、最近、国際社会の北韓への強い制裁が続いたことで、ことしに入り脱北する北韓住民が急増しており、ことし初めから先月まで脱北した北韓住民の数は815人と、去年の同じ時期に比べて15.6%増えたということです。
こうした中、最高位級の外交官であるテ公使の韓国への亡命が知られたことで、海外にいる北韓の外交官を中心とした北韓エリート社会の動揺が広がるものとみられています。
金正恩政権の発足後、高級幹部の処刑・粛清が急増したことで、北韓エリートたちの忠誠心が弱まっているという分析も出ています。
その一方で、1997年に北韓の最高位層だった黄長燁(ファン・ジャンヨプ)元朝鮮労働党書記が亡命した際にも、北韓体制の崩壊が予想されていましたが、その後の脱北者の数は減少傾向を見せたため、最近脱北が増えていることを北韓体制の崩壊だと見るのは早計だという指摘も出ています。