韓国南東部・釜山(プサン)の日本総領事館前に旧日本軍の慰安婦被害者を象徴する少女像が設置されたことへの対抗措置として、日本政府が長嶺安政(ながみね・やすまさ)韓国駐在日本大使を一時帰国させてから20日以上が過ぎましたが、現在も大使は韓国に帰任しておらず、韓日間のあつれきは解消の見通しが立っていません。
大使の一時帰国の期間は当初10日程度とみられましたが、予想以上に長期化しています。
韓日両国間のあつれきは、領土問題にも飛び火し、激化の一途をたどっています。
京畿道(キョンギド)の議会が慰安婦を象徴する少女像を独島(トクト、日本でいう竹島)に設置しようとする動きをみせていることについて岸田文雄外務大臣は17日、「竹島は日本固有の領土」と発言し、これに対し、韓国外交部は韓国駐在日本公使を外交部に呼んで抗議するなど、対立が激しくなっています。
また、韓国人が長崎県対馬市の寺から盗んで韓国に持ち込んだ仏像「観世音菩薩坐像」について、大田地方裁判所が26日、所有権を主張している忠清南道(チュンチョンナムド)瑞山(ソサン)市の浮石(プソク)寺に引き渡すよう命じる判決を出し、日本国内での韓国に対する世論はさらに悪化しています。
さらに、日本政府は28日、小・中学校の社会科の新学習指導要領に沿って、独島を「日本固有の領土」と初めて明記する方針を決め、韓日関係の新たな懸念材料となっています。
歴史認識問題や領土問題は、国民感情にかかわる問題であるため解決が難しく、さらに、韓国は朴槿恵(パク・クネ)大統領の弾劾問題で政治的空白に陥っていることに加え、韓国に対して強硬策を取ることが安倍政権の支持率上昇につながっていることや、アメリカで政権が交代し、仲裁者としてのアメリカの役割が弱まっていることなどから、韓日のぎくしゃくした関係は当分続くというのが大方の見方となっています。
来月22日には島根県が「竹島の日」の記念式典を強行する予定で、3月中には日本の学習指導要領の改訂が控えていること、4月にはモナコでIHO=国際水路機関の総会が開かれ、韓国と日本が東海の表記の扱いをめぐって対立する見通しとなっていることなどから、両国関係のさらなる悪化が懸念されています。
しかし、アメリカのトランプ政権の発足とともに、北東アジア情勢が急変する可能性があるなか、対立を続けるのは韓日両国にとって望ましくないと指摘する声が上がっています。
政府当局者は、「ハイレベル外交接触などを通じた関係改善の努力が急務だ。来月中旬にドイツで開かれる主要20か国外相会議で閣僚級会談を行い、関係改善の転機とすべきだ」と話しています。