アメリカの高高度迎撃ミサイルシステム=「サード(THAAD)」の韓国への配備が本格的に始まったことを受け、中国政府は7日、「サード配備による代価は、韓国とアメリカが支払わなければならない」と警告しました。今後、中国の報復が強まり、韓国経済が悪影響を受けることが懸念されています。
中国外務省の報道官は7日、「サード配備による代価は、韓国とアメリカが支払わなければならない」とした上で、「自国の安全保障上の利益を断固として守るため、必要な措置をとっていく」と警告しました。
韓国とアメリカは去年、韓国へのサード配備で合意していますが、中国はサードが自国の安全保障に対する脅威だとして繰り返し反発し、今年に入ってから報復とみられる措置を本格化させていました。
そして、6日夜、サードの発射台などが韓国に搬入され、サードの配備が始まったことで、中国が報復の度合いをさらに強めることが懸念されています。
実際にサードの発射台が搬入された直後の7日には、韓国の大企業、ロッテの大型スーパー、「ロッテマート」の場合、中国内で営業している店舗の3分の1にあたる39店舗が、中国当局から営業停止を通告されています。ロッテは、韓国の国防部にサード配備の敷地を提供したことで、中国の標的になっています。
また、8日には、中国人に人気の済州島に旅行の予約を入れていた中国人観光客11万人が予約をキャンセルしたことがわかりました。中国は2日、中国人が旅行会社から韓国へのパック旅行商品を買えないように中国の旅行社に指示したとされており、報復が現実化した形です。
こうした中国の報復とみられる措置は、特に観光と消費財で著しく現れています。韓国のIBK経済研究院は、8日にまとめた報告書の中で、サードの配備による中国の報復によって、韓国経済は主に観光商品や消費財、コンテンツ分野の収入で大きな打撃を受け、韓国の年間GDP=国内総生産が、0.59ポイントから1.07ポイントまで減少する恐れがあると指摘しています。
一方、アメリカのホワイトハウスは、8日の定例会見で「サードは、北韓の脅威から同盟国を守るためのもので、サード配備は滞りなく進めていく」と改めて強調し、中国の反対にも関わらず、配備を強行していく考えを示しました。
サードをめぐり、中国と韓国、アメリカの対立が深まる中、アメリカのトランプ大統領と中国の習近平国家主席は、初めてとなる首脳会談を4月はじめに行う方向で調整しているということで、この場で何らかの妥協点がみつかるかに注目が集まっています。