文在寅(ムン・ジェイン)大統領が28日、慰安婦問題をめぐる2015年12月の韓日合意に対する外交部傘下の作業部会による検証結果を受け、「政府間の約束であれ、大統領として、この合意で慰安婦問題が解決できないことを改めて明確にする」と表明したことで、韓国側が再交渉を持ち出し、韓日関係が一気に冷え込むのではないかと懸念する見方が広がっています。
韓日合意に関する作業部会は27日、検証結果を発表し、「被害者の意見が十分反映されず、両政府の間に裏合意があった」と指摘しています。
これについて、大統領府青瓦台は、最初は反応を控えていましたが、検証結果の報告を受けた文在寅大統領は、「合意過程の問題点や今後の方向について国民に説明すべきだ」として、大統領としての見解を表明することを決めたということです。
しかし、破棄や再交渉に乗り出すことには、文大統領も慎重な姿勢で、青瓦台高官は28日、韓国メディアとのインタビューで、「合意の無効化ではない。文大統領が自身の見解を明らかにしたものだ」と説明しています。
文大統領自身も、見解発表のなかで、「韓日両国が不幸な歴史を乗り越え、真の友人になることを願う。そのような姿勢で日本との外交に臨む」と強調しています。
また別の青瓦台関係者は、「韓日関係を未来志向的に変えていくというのが文大統領の考え方だ」としています。
政府関係者は、「アメリカの高高度迎撃ミサイルシステム‘サード’の韓国配備をめぐり対立していた中国との間で、意見の隔たりを乗り越え、関係改善に向けて取り組むことで合意したように、日本とも未来志向的な協力に乗り出すことができると考えている」と話しています。
一方、トランプ政権の出方も注目されます。オバマ前政権は、任期中、韓日米3か国の同盟強化に向けて、慰安婦問題をめぐる韓日間の対立の早期解決を求めており、そうしたアメリカの考え方はトランプ政権になってからも変わっていません。こうしたことから、政府は、韓日合意に関する作業部会の検証結果について、アメリカ政府とも意見を交わしたもようです。