北韓の金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長が、習近平国家主席と初の首脳会談を行ったことが明らかになり、会談の意味や、5月の開催が想定されている米朝首脳会談に及ぼす影響に関心が寄せられています。
今回の訪中は、トランプ大統領が対北韓政策でタカ派とされる、CIA=中央情報局のポンペイオ局長を国務長官に内定したほか、ホワイトハウス国家安保会議(NSC)補佐官として同じく厳しい強硬派といわれるボルトン氏を抜てきし、「完全な非核化」に向けて北韓への圧力を最高水準に引き上げている時点で行われました。
アメリカは、強硬派で外交・安保担当の顔ぶれをそろえていて、米朝首脳会談が失敗に終わる場合、軍事的攻撃に出る可能性も排除できないとの観測が出ています。
こうした中、北韓が中国との関係改善に乗り出しているのは、北韓としてはアメリカをけん制する安全弁を確保した意味がある一方、米朝首脳会談の前に韓米が作った対話のプロセスに左右されないことをアピールすることで、アメリカとの交渉を有利に進める切り札にする狙いがあるとの分析が出ています。
淸華大学カーネギー世界政策研究員は「トランプ大統領との首脳会談は非常に重要だが、リスクと不確実性を抱えている。アメリカは会談が失敗した場合、軍事的攻撃を含めて北韓への圧力をさらに高める可能性がある。こうした状況では良好な中朝関係が、アメリカにブレーキをかける役割を果たすだろう」と述べました。
一方、大統領府青瓦台の当局者は、金正恩氏の今回の訪中について「南北、米朝首脳会談を前に中国と北韓の関係が改善するのは、前向きなシグナルだ」と歓迎しました。
中国が友邦として北韓の非核化を導き出すうえで積極的な役割を果たす場合、米朝首脳会談に前向きな影響を及ぼす可能性が高いためです。
ただ、北韓が中国とアメリカの間で過度に綱引きすることで、韓半島の非核化に向けた議論を長引かせる可能性も排除できず、今後の行方に関心が寄せられています。