日本企業に強制徴用被害者への損害賠償を命じた大法院の判決が相次いでいることで、韓日関係のさらなる冷え込みが懸念されています。
先月末、大法院が新日鉄住金に対して強制徴用被害者への損害賠償を命じる判決を下したのに続いて、今月21日には、 旧日本軍慰安婦問題をめぐる2015年の韓日合意にもとづいて設立された「和解と癒やし財団」の解散が決まり、韓日関係は悪化の一途をたどっています。
河野太郞外相は、29日、三菱重工業新に強制徴用被害者への賠償を命じた大法院の判決を受けて、談話を発表し、「極めて遺憾だ。決して受け入れられない」としています。
また、秋葉剛男外務次官は李洙勳(イ・スフン)駐日韓国大使を呼んで、抗議しています。
これに対して、韓国政府は、韓日関係について、慰安婦や強制徴用など過去の歴史問題と、経済や安全保障などでの協力を切り離して対応する「ツートラック(2つの路線)」戦略を取るとしています。
外交部の当局者は、今回の判決について、「司法の判断を尊重する。強制労働被害者の傷が癒されるよう努力する」と述べました。
また、「あらゆる状況を総合的に踏まえて政府の対応策を講じる。未来志向の韓日関係に発展させていくことを望んでいる」と強調しました。
韓国政府は、強制徴用賠償の判決について、官民による十分な議論を経て、対応策を講じるとしています。
その一環として、李洛淵(イ・ナギョン)国務総理は今月13日に東アジア財団理事長など韓日関係の専門家10人あまりとの昼食会を開き、意見を聴取しています。
また、韓国政府は、官民による共同委員会を立ち上げて方策を検討するとしていますが、これといった解決策を見出すのは、容易ではないというのが大方の見方です。
日本企業が、賠償判決を履行する可能性が低いなか、韓国政府が代わって補償するか、ドイツが東ヨーロッパの国々との関係で行った「記憶・責任・未来」財団のような形の財団を設立する案などが専門家の間で挙がっています。
しかし、日本企業の賠償責任を韓国政府が肩代わりすれば、被害者や世論の反発が強まる可能性があります。