労働組合の全国組織、民主労総=全国民主労働組合総連盟と市民団体らは、韓国の情報機関、国家情報院と警察庁が、民主労総の本部を国家保安法違反の疑いで家宅捜索したことについて、労働組合への弾圧だとして激しく反発し、ことし7月にストライキを行うと予告しました。
国家情報院と警察は18日、民主労総の組合員など4人が海外で北韓の工作員と接触したとして、反国家団体との連絡を禁じる国家保安法第8条への違反の疑いで、事務所を含む10か所あまりを家宅捜索しました。
当局は、この4人が2016年から2019年にベトナムやカンボジアなどで北韓の工作員と数回にわたって接触したとみています。
国家情報院が国家保安法違反の疑いで民主労総の本部を家宅捜索したのは、今回が初めてです。
家宅捜索は18日の午前9時ごろから午後8時まで、長時間にわたって行われました。
これを受けて民主労総のヤン・ギョンス委員長は19日、記者会見を開き、「形骸化した国家保安法が一人の大統領によって復活した。労働組合への弾圧だ」と批判し、ことし7月に大規模なストライキを行う方針を明らかにしました。
ヤン委員長は、「政権に対して苦言を呈し続ける民主労総の口をふさぐためのイデオロギー攻勢だ」と批判しています。
市民団体らからなる「国家情報院監視ネットワーク」も18日、声明を出し、「国家情報院の改革を後戻りさせる狙いがあるのではないか」と非難し、情報機関としての役目を忠実に果たすよう促しています。
スパイ行為など国家保安法に反する犯罪に対する国家情報院の捜査権は、先の文在寅(ムン・ジェイン)政権で可決された改正国家情報院法にもとづいて、来年1月1日から警察に移管されます。
権力機関が、国家保安法に反する犯罪への捜査を理由に、国内政治に介入する余地をなくすための法改正でした。
こうしたなか、与党「国民の力」の鄭鎮碩(チョン・ジンソク)非常対策委員長は19日、「前の政権ではスパイを捕まえるべき国家情報院が『南北対話の窓口』となってしまっていた。国家保安法に反する犯罪への国家情報院の捜査権を警察に移管するのは見直しが必要だ」と主張しました。