尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領の夫人、金建希(キム・ゴニ)氏が株価操作に関与したとされる疑惑について、特別検察による捜査を行うための法案が国会で可決されました。尹大統領は、拒否権を行使する方針です。
国会は28日、尹大統領の夫人、金建希氏が株価操作に関与したとの疑惑に関して、政府から独立した「特別検察官」による捜査を実施するための法案を、野党単独で可決しました。
特別検察官の制度は、政治的な中立が求められる事件において、捜査に影響を与えることができる政府の高官などが捜査対象になった場合に、国会の賛成多数で導入されるもので、特別検察官が、政府や検察から独立して捜査を行う制度です。
この事件をめぐっては、輸入車の販売会社「ドイツ・モーターズ」の元会長が2009年から2012年にかけて株価を操作したとして、検察がおととし11月に元会長を逮捕していて、ことし2月には、元会長に対して、懲役2年、執行猶予3年、罰金3億ウォンを命じる一審判決が出されました。
金夫人は、株価操作の過程で、資金を工面したという疑いが持たれていて、「ドイツ・モーターズ」の元会長の裁判で、金氏が証券会社の社員と通話した際の録音が公開され、金氏が株式の購入を直接指示していたことが明らかになっていますが、金氏に対する調査は行われていません。
今回可決した法案が施行されれば、最大100日間にわたって特別検察官による捜査が行われることになり、来年4月の総選挙で与党が不利になるとの見方が強くなっています。
大統領室は、「法案が政府に回送され次第、直ちに拒否権を行使する」としています。
一方、与党「国民の力」は、野党が、来年の総選挙に向けて、大統領夫人に対する疑惑を政権のイメージダウンに利用しているとして非難しています。
今回の法案を大統領が拒否した場合、国会の再決議による成立には、国会議員の過半数が出席し、出席した議員の3分の2以上が賛成する必要があります。
ただ、与党が議席の3分の1以上を握っているため、法案は最終的に廃案になる可能性が高いとみられます。
世論調査会社、韓国ギャラップの調査によりますと、回答者の7割が「尹大統領は拒否権を行使するべきではない」と答えていて、拒否権を行使すれば、世論の反発が起きる可能性があります。