おととし、ソウルの繁華街、梨泰院(イテウォン)で起きた転倒事故について真相究明に向けた特別調査委員会を設置するための法案、通称「梨泰院惨事特別法」が今月、野党単独の可決で国会を通過したことをめぐり、政府は閣議を開き、国会での再議決を要求することを決めました。
今月9日に開かれた国会の本会議で「梨泰院惨事特別法」の採決が行われ、法案は、特別調査委員会の設置に反対する与党「国民の力」の議員が退場するなか、最大野党「共に民主党」をはじめとする野党議員全員の賛成によって可決され、19日、政府に移管されました。
一方、政府は30日に開かれた閣議で、この法案に対する再議要求案を議決しました。
尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領が再議要求案を裁可した場合、「梨泰院惨事特別法」は国会に差し戻され、再議決の手続きを踏むことになります。
政府は再議を要求する理由について、「特別調査委員会の業務の範囲や権限が過度に広く、憲法に反する可能性があるほか、特別調査委員会を構成するメンバーの公正性や中立性が担保されていない。また、莫大な予算と行政資源が投入されるにもかかわらず、国民の分裂を招くおそれがある」としています。
そのうえで、「本当の意味で遺族と被害者、韓国社会の傷を癒し、再発防止に貢献できる特別法が制定されるなら政府も積極的に受け入れる」として、「梨泰院惨事特別法」で問題となる可能性がある条文をめぐり、与野党間で十分な議論を行うことを呼びかけました。
一方、政府は、遺族側と協議を行い、遺族や被害者を支援するための総合対策をまとめ、実質的な支援と追悼を行う計画です。
具体的には、被害者に対する医療費支援を増やし、事故に対する国の責任をめぐる裁判の結果が確定する前であっても賠償を行うと説明しました。
また、遺族との協議を経て、犠牲者を追悼する場所を設置するほか、梨泰院一帯の経済を活性化するための対策も講じる方針だということです。