去年、海兵隊員が殉職した事故をめぐって大統領室が圧力をかけた可能性があるとして、通常の検察から独立した特別検察官による捜査を可能にするための法案が、国会本会議で野党主導で可決されましたが、これに対して、尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領がまた拒否権を行使しました。
尹大統領による拒否権の行使は、これで15回目となります。
海兵隊員の殉職をめぐる特別検察法案は、今月4日の本会議で、法案に反対する与党議員の大半が欠席する中、最大野党「共に民主党」を中心とする野党議員の賛成多数で可決していて、今月20日が大統領による拒否権行使の期限でした。
大統領室は9日、尹大統領がこの法案についてまた拒否権を行使したことを発表し、「野党が一方的に押し進めたものだ。警察の捜査によって、真実と責任追及がすでになされているため、法案は撤回されるべきだ」と述べました。
海兵隊員の死亡事故をめぐっては、海兵隊員に救命胴衣を着用させないまま、水害の捜索・救出活動にあたらせたとして、その責任者については、事故発生当時からこの事故を捜査していた海兵隊の捜査団から捜査記録を譲り受けて警察が捜査を進めている一方、この事故に関する捜査に大統領室が圧力をかけた疑惑については、政府高官などの不正を捜査する独立機関「高位公職者犯罪捜査処」が捜査を進めています。
しかし、海兵隊の捜査団と高位公職者犯罪捜査処に大統領室と国防部が圧力をかけた疑いがあり、特別検察法案は、こうした疑惑を究明するために特別検察官を導入することを柱としています。
尹大統領は、NATO=北大西洋条約機構の首脳会議に参加するため、アメリカを訪れており、訪問初日の9日(韓国時間)にハワイで電子署名方式で、拒否権の行使案を承認しました。
この特別検察法案は、尹大統領が拒否権を行使したため、野党が再び法案を可決するには、国会議員の過半数出席と出席議員の3分の2以上の賛成が必要となります。