尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領は15日、日本の植民地支配からの解放を記念する「光復節」の式典で新たな南北統一構想を発表しましたが、この構想では南北当局間の交渉ではなく、北韓住民の間に変化を促すことに焦点が当てられています。
尹大統領は15日の演説で、新たな南北統一構想を発表し、「自由を剥奪され、貧困と飢餓に苦しむ北方の地に我々が享受する自由を拡大しなければならない」として、北韓住民の間に変化を促すことで統一を実現すると強調しました。
また、演説では南北当局が緊張緩和や経済協力などを実務レベルで話し合う「対話協議体」の設置にも言及していますが、政権発足後、尹大統領が直接踏み込んで南北対話を提案したのはこれが初めてです。
尹大統領が発表した統一構想について、大統領室の関係者は16日、南北間の「対話による協力」は現状では程遠いと判断し、より現実的な統一のビジョンを提示したとしながら、「韓国が先制的に行動する必要がある」と述べました。
特に、この構想では、北韓住民の変化を促すために「外部情報へのアクセス拡大」を強調していますが、金暎浩(キム・ヨンホ)統一部長官は16日に行われた記者会見で、その具体的方策として、「北韓の実情を客観的に認識してもらえるコンテンツを制作して拡散させる方法を模索するとともに、北韓に対して人道支援を引き続き行っていく」ことをあげました。
核開発に集中している北韓当局の変化は期待できない状況で、韓国が「草の根の変化」を促し、北韓の体制変化を導き出すための対応とみられます。
今回発表された構想について、専門家の間では「現状を踏まえた現実的な方策」として前向きな評価がある一方で、自由民主主義の平和統一を標榜しているものの、事実上、韓国による「吸収統一」をほのめかしたことから、北韓との対話はおろか、さらなる反発を呼ぶと懸念する声も出ています。