長崎県対馬市の観音寺から盗まれて韓国に持ち込まれた仏像をめぐり、所有権を訴えた忠清南道(チュンチョンナムド)瑞山(ソサン)市の浮石寺(プソクサ)が、観音寺側の所有を認めた去年の韓国最高裁判決を踏まえ、日本への返還に反対しない考えを示したことが、24日わかりました。
共同通信によりますと、浮石寺は、仏像の日本への返還に反対しない考えを示したうえで、返還する前に仏像の安寧を願う「法要」を浮石寺で執り行いたいとの意向を日本側に伝えたということです。
この仏像は、1973年に長崎県指定有形文化財に登録されましたが、2012年に韓国国籍の窃盗団によって韓国に持ち込まれました。その後、窃盗団は有罪判決を受け、韓国政府が仏像を回収し、現在は大田(テジョン)国立文化遺産研究院の文化遺産保存科学センターに保管されています。
日本政府が仏像の返還を求めた2016年、浮石寺は韓国政府に対し、仏像の引き渡しを求める訴訟を起こしました。
仏像の所有権を主張する根拠として、仏像の中に「1330年、高麗(コリョ)瑞州(ソジュ)の寺に奉安するために仏像を制作した」との記録が残っていることを挙げ、「かつて倭寇に略奪されたものであるため、本来の所有者である浮石寺に返還されるべきだ」と主張しました。
これを受け、観音寺も所有権を主張し、引き渡しを求める訴訟を起こしました。
1審の地方裁判所は、「浮石寺は、高麗時代に創建されたあと、朝鮮時代に修復された寺であり、仏像が浮石寺の所有であると推定できる」としたうえで、「仏像は過去、盗難や略奪など正常ではない形で対馬に渡ったとみられる」などとして、浮石寺への引き渡しを命じる判決を言い渡しました。
しかし、2審では、「過去の浮石寺と現在の浮石寺が、同じ権利の主体であるとみるのは難しい」としたうえで+、+「観音寺が所有権を適法に取得した証拠は不十分だが、一定期間占有したことで、取得時効が成立した」と判断しました。
そして、去年10月の最高裁でも同じく、「仏像が高麗時代に倭寇に略奪され、日本に持ち込まれた蓋然性があるなどの理由で、観音寺の取得時効を排除することはできない」と判断しました。