尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領による「非常戒厳」の宣言をめぐって、検察の特別捜査本部は、尹大統領について捜査を行っていることを明らかにしました。現職の大統領が内乱容疑で捜査を受けるのは初めてです。
検察の特別捜査本部の朴世鉉(パク・セヒョン)本部長は8日の記者会見で、尹大統領による非常戒厳宣言について、「公務員が職権を乱用し、憲法秩序を乱す目的で暴動を起こしたもの」とし、尹大統領を被疑者として立件し、内乱をくわだてた疑いや、職権を乱用した疑いについて捜査していると述べました。
韓国で、現職大統領は刑事訴追を受けないという「不訴追特権」が与えられますが、内乱罪は、その例外となります。
検察は、野党側の告発を受け、6日に特別捜査本部を設置しましたが、検察のほかに警察や国の高位公職者犯罪捜査処もこの問題の捜査に乗り出しています。このうち、高官の不正を捜査する高位公職者犯罪捜査処は9日午後、尹大統領に対して「出国禁止」を法務部に申請し、出国禁止が確定しました。また、警察は、尹大統領に対して「緊急逮捕」を検討していると明らかにしています。
複数の捜査機関が同時に動く中で、捜査の範囲や調整が不明確な状態となっています。
こうした中、最大野党「共に民主党」は、尹大統領に近い人物が多数を占めている検察が公平な捜査を行うことは期待できないとして、政府から独立した「特別検察」による捜査を求めています。
このため、「共に民主党」は特別検察による捜査を可能にする法案を国会に提出し、早期の採決を目指すとしています。
「共に民主党」は通常の特別検察と、捜査期間が短いものの大統領の拒否権が及ばない常設特別検察の両方を活用し、公平な捜査体制を確立したい考えです。
尹大統領に対する捜査は、韓国の政局に大きな影響を与える可能性があり、今後の動向に注目が集まっています。