尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領による「非常戒厳」の宣言に関し、尹氏の側近で戒厳令を出すよう助言したとされる金龍顕(キム・ヨンヒョン)前国防部長官が、10日夜遅く、内乱などの疑いで検察に逮捕されました。「非常戒厳」をめぐって政権の幹部が逮捕されたのはこれが初めてです。
ソウル中央地方裁判所は、逮捕状を出した理由について「証拠隠滅のおそれがある」などと説明しています。
金氏は、野党側から内乱をたくらんだ疑いなどで告発され、8日未明に検察に出頭したあと、拘束されていました。
検察は、金氏の逮捕状の中で、「尹大統領と共謀して内乱を起こした」と指摘しています。
検察によりますと、金氏は、宣言の数日前から尹大統領と非常戒厳について話し合っていたと供述しているということです。
金氏は10日に地方裁判所で開かれた自身の逮捕状を出すかどうかの審査に出席しませんでした。
ところで、韓国法務部によりますと、11日、金氏は逮捕状が出る直前の10日夜、拘置所内のトイレの中で服のひもを使って自殺を試みたと明らかにしました。
拘置所の職員が発見して防ぎ、命に別条はないということです。
一方、国会で10日、国防委員会が開かれ、尹大統領が今月3日に「非常戒厳」を宣言した際に国会に突入した特殊部隊を統括していた司令官が出席し、尹大統領から電話で、「議員を引きずり出せ」と直接指示されていたと証言しました。
尹大統領は「議決の定員がまだ満たされていない。早くドアを壊して入って、議場の中にいる議員を引っ張り出せ」と指示していて、非常戒厳宣言の解除を求める決議案が国会で可決されるのを妨害する意図があったとみられます。
司令官はこの指示に対し、多くの人がけがをしたり、兵士が罪に問われたりする可能性を懸念し、作戦を続けることは難しいと判断して、中止させたということです。
尹大統領が戒厳令解除を阻止するため議員を強制的に排除しようと直接指示していたとの疑いが強まり、今後、尹大統領への捜査が加速する可能性が高まっています。
この司令官はさらに、宣言の2日前の今月1日に、当時の金国防部長官から電話で、「国会や選挙管理委員会など、6か所を確保しろと指示を受けた」と証言し、軍上層部が戒厳計画を事前に準備していた可能性が示唆されています。