韓国政府はこれまで、市民団体による北韓に向けたビラ散布に対し、「表現の自由」だとして制限せずにいましたが、尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領の弾劾訴追案が国会で可決されたあと、立場を変えて、ビラ散布について慎重な判断を呼びかけました。
金暎浩(キム・ヨンホ)統一部長官は16日午前、国会の外交統一委員会で、北韓に対するビラ散布について「国民の命と安全を最優先に考慮し、状況の管理に取り組みたい」としたうえで、「12日に市民団体に慎重な判断を要請した」と述べました。
統一部はこれまで、市民団体によるビラ散布は「表現の自由」であるという憲法裁判所の判断を尊重し、ビラ散布を強制的にやめさせることはしませんでしたが、今回、突然、立場を変えたのは、尹大統領の弾劾をめぐり不安定な政局が続くなか、南北の緊張を高めるリスクを最小限に抑えたい考えだとみられます。
政府はことし7月、国会外交統一委員会に提出した資料で、北韓に対するビラ散布を禁止する法律を立法しようとする野党に対し、「『表現の自由』が民主主義の根幹となる憲法的価値であることを強調した憲法裁判所の判断などを考慮すれば、慎重な検討が必要だ」と反対する立場を示していました。
憲法裁判所は去年9月、北韓へのビラ散布を禁じた「南北関係発展法」について、政治的意思表現の自由を制限しているとして、違憲だとする判断を下しました。