尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領による「非常戒厳」宣言の真相を究明するために、最大野党「共に民主党」が主導する特別検察法案は、与党「国民の力」の反対により国会を通過できずにいましたが、与野党間の交渉に前進の兆しが見えています。
大統領権限代行の再議要求権、いわゆる「拒否権」の行使により国会に差し戻された、尹大統領の内乱容疑を特別検察官に捜査させるための特別検察法案が8日、再採決にかけられましたが、在籍議員300人中賛成198票、反対101票、棄権1票と、可決に必要な200票まで、あと2票で否決となり、廃案となりました。
これを受けて「共に民主党」は、特別検察法案の一部を修正し、9日、改めて発議しました。
これまで与党側が、特別検察官の推薦をめぐって、「『共に民主党』などにのみ推薦権がある」という条項に反発していたことを踏まえ、これを「第3者」が推薦するよう修正し、与党に反対の口実を持たせない考えです。
高位公職者犯罪捜査処などでつくる合同捜査本部の捜査がスムーズに進まない状況で、野党側には、特別検察法による突破が必要だという判断が、背景にあるものとみられます。
また、この法案では、尹大統領が戒厳令の大義名分をつくるため、北韓との武力衝突を誘導した疑惑をめぐって、捜査の範囲に、国の安全を脅かす外患を招いたり、それに同調する行為に問われる「外患誘致罪」が追加されました。
一方、与党「国民の力」も、野党による特別検察官推薦の独占や広すぎる捜査範囲など、認められない条項をなくす方向であれば、交渉に臨むという姿勢を示しています。
「非常戒厳」宣言により与党への世論の支持が悪化したうえ、大統領夫妻をめぐる特別検察法の採決で党内の造反が増えている状況を考慮した判断とみられます。
先月12日に行われた差し戻された1回目の採決は、在籍議員283人中賛成195票、反対86票、棄権2票で国会を通過していました。