「非常戒厳」を宣言し、内乱容疑で拘束されていた尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領に対して、ソウル西部地方裁判所は19日未明、「証拠隠滅の恐れ」があるとして、逮捕状を発付しました。韓国で現職の大統領が逮捕されたのは、初めてです。
これに先立ち、尹大統領を拘束した合同捜査本部は17日、内乱を首謀した疑いなどで大統領の逮捕状を裁判所に請求していました。合同捜査本部は、逮捕状請求に際して、「犯罪の重大性と再犯の危険性」を強調しました。
これを受けて、ソウル西部地裁では18日午後、逮捕状を出すかどうかを判断するための令状審査が5時間近くにわたって行われました。尹大統領は自ら出席して、令状請求の棄却を求めましたが、裁判所は「証拠隠滅の恐れがある」として、認めませんでした。
裁判所が逮捕状を発付するには、証拠隠滅の恐れがあるのか、そして、容疑がある程度認められるかが重要ですが、裁判所は、今回、その両方について認められると判断しました。
裁判所は、尹大統領が非常戒厳の前後に自らの携帯電話を買い替えたり、声や文字を送れるメッセンジャーアプリから脱退した点などから証拠隠滅の恐れがあると判断しました。
また、尹大統領は、戦時などの国家非常事態ではないのに違法な非常戒厳を宣言し、国会に軍や警察を動員して非常戒厳の解除を妨げようとしただけでなく、主な政治家などを逮捕し、拘禁しようとした疑いなどがもたれていますが、その容疑についても事実上認める形になりました。
尹大統領は逮捕されて、引き続き拘束状態で起訴まで最長20日間、取り調べを受けることになります。
一方、KBS=韓国放送によりますと、尹大統領の逮捕を受けて、100人以上の支持者たちが裁判所の窓ガラスを消火器でたたき割って内部に乱入したり、警察官に暴力をふるったりして暴動を起こしました。警察はおよそ1400人を投入し、その場で80人あまりを拘束しました。