国連の人権理事会に提出された報告で、北韓の人口の半分近くが栄養失調にかかっているという見方が示されました。
北韓の人権状況について調べている特別報告者のエリザベス・サルモン氏が最近、国連の人権理事会に提出した報告書によりますと、北韓で栄養失調になっている人の割合は、2020年からの3年間で、平均45.5%で、1180万人に上るということです。
これは、国連の食糧農業機関(FAO)などが調査した資料にもとづいて算出したものです。
北韓が食糧の増産に努めているにもかかわらず、慢性的な食糧不足にさいなまれている理由としては、老朽化した生産インフラ、技術の遅れ、投資不足、自然災害などが挙げられ、これらが複合的に影響したとみられています。
報告書では、「北韓が、市場での取り引きなど、民間の商業活動を制限し、コメやトウモロコシなどの生活必需品の流通を再び国が独占的に統制する方向へと切り替えたため、食糧難が深まったとみられる」と説明しています。
また、サルモン氏は、北韓は保健・衛生環境も改善されていないと指摘しました。
さらに報告書は、WHO=世界保健機関が結核の患者数の多い国30か国のうちの一つとして北韓を挙げたとしたうえで「栄養失調と厳しい寒さで結核が増えていると報告されている」と記しています。
また、北韓では、排泄物を衛生的に処理する施設を持たない世帯が全体の52%に上り、これが下痢の原因になるなど、公衆衛生にも深刻な影響を及ぼしていると指摘しました。