韓国で、医師や医学生らが、政府が進めている医学部の定員拡大を含む医療改革政策の全面的な見直しを求めて、大規模な抗議集会を開きました。
開業医を中心とする韓国最大の医師団体「大韓医師協会」は、20日午後、ソウル中心部の崇礼門(スンネムン)周辺で「医療正常化のための全国医師決起大会」と題した集会を開催しました。
主催者によりますと、全国から医師や医学生などおよそ2万人が参加したということです。この中には、医学生およそ6000人も含まれているとしています。
会場では、大韓医師協会のキム・テグ会長が、「医療教育は崩壊し、現場では混乱が続いているが、政府は責任ある説明も対策も示していない」と批判し、「政府は過ちを認め、責任ある謝罪と具体的な対策を示すべきだ。医療改革については、一から議論をやり直す必要がある」と訴えました。
韓国政府は先週、来年度の医学部の入学定員について、これまでの増員方針を撤回し、もとの3058人に戻すことを決定しました。あわせて、2027年度以降の定員については、人材需給の見通しに基づいて慎重に検討していく方針も示しています。
しかし、医療界はこうした見直しでは不十分だとして、政策そのものを白紙に戻すよう求めています。中には、「政府が完全に政策を撤回するまで大学には戻らない」とする強硬な姿勢の医学生もいるということです。
政府は、地域の医療や小児科・産科といった診療分野での医師不足に対応するため、医学部の定員を増やす方針を打ち出していました。
これに対して医療界は、教育や研修の体制が整わないまま定員だけを増やせば、医療の質が低下し、患者の安全にも関わるとして強く反発し、医学生による国家試験のボイコットや、研修医の大規模な病院離脱が相次ぎ、医療現場で混乱が続いていました。
こうした中、憲法裁判所が尹錫悦(ユン・ソンニョル)前大統領の弾劾を認め、罷免を決定したことで、定員拡大を含む医療改革政策は、現在、事実上、推進の勢いを失った状態となっています。
それでも医療界は、政策の完全な撤回を求めて、さらなる圧力をかけるかたちで、今回の集会を開いたものとみられます。