尹錫悦(ユン・ソンニョル)前大統領による去年12月の「非常戒厳」宣言をめぐり、特別検察官が、特殊公務執行妨害などの容疑で尹前大統領を初めて事情聴取しました。
尹前大統領は28日、ソウル高等検察庁に出頭しましたが、報道陣の質問には答えず、玄関から庁舎に入りました。尹前大統領側は報道陣に公開されない地下駐車場からの入館を求めたものの、認められませんでした。
尹前大統領は非常戒厳をめぐり、ことし1月の大統領在任中に内乱を首謀したとして逮捕、起訴されました。その後、釈放されて在宅のまま公判に臨んでいます。すでに裁判は始まっていますが、李在明(イ・ジェミョン)政権発足直後の今月5日、国会が政府や検察庁から独立した特別検察官に改めて捜査させる法案を可決させ、内乱事件に関連する職権乱用などの疑いも含めた広範囲な捜査が始まりました。
今回の聴取では、ことし1月、尹前大統領が高位公職者犯罪捜査処による自身の逮捕状の執行を妨害するよう大統領警護庁に指示したとされる「特殊公務執行妨害」などの容疑について、追及が行われました。
しかし、担当捜査官が、尹前大統領に対する「違法拘束」を執行したなどとして刑事告発されており、「加害者」が取り調べを行うことはできないと反発したため、出頭から帰宅までに要したおよそ15時間のうち、実際に行われた聴取はおよそ5時間にとどまりました。
特別検察官側は、今回の聴取だけでは不十分だとして、30日に再び出頭するよう要請しましたが、尹前大統領側は「7月3日以降に延期してほしい」と求めました。これに対し、特別検察官は7月1日の出頭を改めて通告し、「正当な理由なく応じない場合は、刑事訴訟法に基づき強制措置を取る」と警告しています。
特別検察官は今後、尹前大統領が在任中に北韓との対立を激化させて攻撃を誘発しようとした「外患誘致」の疑いに加え、軍や警察、閣議などを動員した国家権力の乱用についても、広範囲に取り調べを行うものとみられています。